案件&拍手お返事に拍手を下さった方、うわー!うれしいです。同じ気持ちの方がいらっしゃって、心強いです~どうにもこうにも下描きがよく見えるのは、やっぱり気持ち的な部分が多いですよね。本当に気楽に描いたほうが、線もいい感じです。拍手ありがとうございました!

こういう勢いだけの絵って後から見返しても、後悔ってないんですよ。幸せそうだな。クロオ。
案件&拍手お返事に拍手を下さった方、うわー!うれしいです。同じ気持ちの方がいらっしゃって、心強いです~どうにもこうにも下描きがよく見えるのは、やっぱり気持ち的な部分が多いですよね。本当に気楽に描いたほうが、線もいい感じです。拍手ありがとうございました!

こういう勢いだけの絵って後から見返しても、後悔ってないんですよ。幸せそうだな。クロオ。
何が起こってるんでしょうね。大切な何かが抜け落ちて、新たに不明なものが生じるという、摩訶不思議な…ハイ、手癖ってやつですかね。違うな。気合?集中力?精神論になってくると、どうにもならんものがあります。ここでは下描きと線画の作業の間に繰り広げられる、地味で偏見に満ちた、私の懊悩を張り付けていきます。磔刑です。張り付けられる内容が生じましたら、即ち見せしめに晒し、石を投げつけていただく所存です。(1/18)上に行くほど新しいです。
2枚追加しました(1/20)






仕上がったはずのページを一晩明けて見返すと、むらっと描き直したい欲が湧きます。無限に湧きます。そうして描き直しばっかやってて、作画が空中分解した話があります。どこかで折り合いをつけるために、こんなふうに形に残そうと思います。
まずは拍手お返事から~
***uさま、遅くなりました。今年もどうぞよろしくお願いいたします。いよいよがまだまだにならないように、コツコツとやってます。大変恐ろしい仕上がりになってきておりますが、もう少し!がんばります!
続いて、案件~

もうこれは一種の病気なんじゃないかと。下描きが一番よく見えて、それになぜか線画がついて来ない…おいおい、とうとうここまでいかれたか…
いやいや、これはあれだよ。家族パロ終わらせようって焦ってるから、作画が荒くなってんだ。間違いない。一コマ一コマへたくそなりに丁寧に仕上げるんだ。くそう、2か月前の自分の絵のほうがよく見える。だから今をー、たいせつにー、がーんばーろーおーーー
お見苦しいかもしれませんが、当人いたって楽しんでます。ご心配なく!(笑)
全然関係ないのですが、ようやくOSをアップグレードしました。そしたらサイトのデザインがかなり変わって見えて「???」状態です。問題なく動くからいいけどなあ…フォントの良さが無くなってしまった。解決しようとすると、ややこしいことになりそうなので、やめときます。
いやあああああ。まさか年を越すとは思わなかったです。仕留めると決意してから、じりじりと頭の中にあるストーリーを搾り出してきたわけですが、なんでこんなに時間がかかってるのか自分でもよくわかりません。できたものを見返しても「内容薄ッ」ってなったり「この展開要ったかな」とかになってたりするので、みなさま、どうかあんま期待しないで下さい(滝汗)そんでも必死に描いてきたもんなので、最後までガンバリマス。ハハッ。
と言うのも、さっき最終話のネームを切りまして、これから下描き、仕上げになっていきます。ついにここまで来ちゃったよ~最後のコマ描くとき、さすがに切なかったよ~
でも、でもこれからの作画コストを思うと頭が痛いです。どうしてこう見切り発車をしちゃうかね。描く人間が多い。背景なんか、なんとか、こう、ふわっと、良い感じにするよ。きっと。未来の自分に期待。

情報開示が難しい~~~~~~~秘密にしたいけど、良い顔かけたら見て欲しくなる~~~~もし「これってあれなんじゃね」って思っても秘密にしといてください。お願いします…言い当てられたら、モチベが死にます。
最終話、気合入れて、やったるぞ。
Mi** Fe***ssさま、Hello!Happy New Year!I remember that there is the person who reads my comic in the USA,when I get an email from you.I always thank you!So that 2020 becomes wonderful age for you.If I create new comics,please see it!With much love,Okome
夢***子さま、あけましておめでとうございます~家族パロとがっぷり四つで年を越してしまいました。家族パロも楽しく描き上げて、キリジャも描く一年にしたいです。おいしいご飯を炊けるようにガンバルゾ。また今年もよろしくです。
Kir*****mさま、まじですか!いやあ、すごいことですよ。本を作るってのはア。どうぞ貴方様の作られる本が、すてきな本になりますように!
晴天***さま、キリジャいいですよね…しみじみ…また遊びに来てやってください。
*のさま、私も実はあの話気にいってるんです。金で動く闇医者と、ヒトゴロシの黒医者の中に、小鳥を住まわせる悪魔的発想 …ただどうしても恥ずかしくて、単発で渋に上げられませんでした。私の意気地なし! そんなマンガを見てくれてうれしいです。ありがとう。
年末にいただいた拍手のお返事は、新年のご挨拶のほうに載せてあります。
返信不要の方も、拍手の方も、どうもありがとうございます~~~~!!!

【年の瀬】
暗い病院の廊下で、あいつに会った。
執刀医のすげ替えという、実にモグリらしい仕事をこなして病院を去ろうとしていた俺の前に、あいつは影のように現れた。厳密に言うと、病院に一つしかない夜間出入り口で、暗がりから出てきたあいつに俺が鉢合わせた、と言ったほうが具体的かもしれない。
その証拠にあいつはしまったという顔を一瞬した。しかしそれが見間違いかと思うほど、次には酷薄な笑みを浮かべて俺に対峙する。
「今回も切ったり貼ったりしたのかい。ご苦労なことで。」
「お前さんこそ、今夜も人殺しか。」
「人聞きの悪い言葉は止せよ。」
「誰もいやしない。」
「そういう意味じゃないよ。安楽死と言ってくれ。」
のらくらとつかみどころのない常套句を並べて、キリコは俺の横を通り過ぎる。
「せっかくの機会だ。とっくりとお前さんに生きる素晴らしさについて語ってやろうじゃあないか。」
俺はキリコの腕を掴んで邪悪に笑う。それを見てキリコはあからさまに嫌な顔をした。
「こんな年の瀬に止めてくれない?どこもかしこも人だらけだよ。」
奇しくも今日は大晦日。娑婆は猫も杓子も新年に向けて大忙し。でもそんなことは闇稼業の俺たちには関係のないこと。盆も正月も病人は待ってくれないからな。にやりと笑ってそう告げた俺の言葉にキリコは少し眉を顰めたが、ため息をついて「どこでご高説を拝聴すればいいですか?」と向き直った。よしよし。初めッから素直にそう言えばいいのに。さてどこで酒を飲もうか、行きつけの飲み屋をピックアップし始めた俺は、キリコの些細な変化に気付きもしなかった。
結局どの店も満員で、やっぱりとか言ったじゃないかとかぶうぶう言うキリコを連れて、初めて行くフランチャイズ系の居酒屋に乗り込んだ。完全個室ということもあって、これはこれで気兼ねせずに飲めるが…うまいかどうかは微妙だな。しかし無理に引きずってきた手前、さも美味そうに焼きの足りないホッケを食べた。キリコも初めこそ渋っていたものの、じきに珍しいカラフルなサワーを面白がって頼んでいた。試しにひとくちもらって、ジュースみたいなサワーに800円も取るのかと文句をつける。
「きれいな飲み物を頼むことに、ステータスがある場合もあるんじゃないの。あ、お姉さん、ひざ掛け、もらえますか。」
向こうのほうで大きな歓声が上がる。ぐびりとサワーを飲んだキリコは「あっちのコたちみたいに。」と軽く首を傾けた。若者のグループが忘年会で盛り上がっているようだ。
「かわいい女の子が焼酎お湯割り梅干入りを飲んでたら、モテないでしょうよ。あ、お姉さん、これ追加でお願いします。」
「そんなことはないぞ。ちゃらちゃらした飲み物より、そっちのほうが俺は好感が持てる。」
カップの中の芋焼酎をぐいっと飲む。
「へえ、そうなの。じゃあ、私、次は生絞りピンクグレープフルーツキウイコラーゲンゼリーカルピスサワー頼もう。」
「何だそれ。呪文か。よく噛まずに言えたな。」
「あ、そうか。噛んだ方がかわいいのか。えっとお、生絞り…」
「やめろやめろ。かわいいとかやめろ。笑って飲めなくなる。」
結局キリコは俺が床に転げて腹を抱えるまで、呪文を詠唱し、きらきらしたサワーを注文し続けた。
「お客さま、次のご注文でラストオーダーになります。」
そう言われるまで、時計を見るのも忘れていた。
「次の注文で最後ってことか。もう一杯焼酎もらおう。お前さんは。」
「うーん、私はいいかな。サワーでお腹が膨れてしまった。」
「あんなもんばっかり頼みやがって。」
「ふふふ、実に興味深かったよ。」
アルコールのほとんどないサワーばかり飲んでいたくせに、キリコの頬はピンクに染まっていた。
会計を折半して、店を出る。夜も更けたというのに、大晦日の夜は人々の声で賑やかしく、イルミネーションが光っていた。白い息を吐いて振り返ると、キリコはタクシーを捕まえていた。
「BJ、じゃあね。」
ひとりでタクシーに乗り込もうとするのを追っかけて、俺もタクシーに体をねじ込んだ。
「ちょっと!家に帰れよ!」
「飲み足りないから。運ちゃん、出して。こいつの家まで。」
「本当に……もう…すみません。住所は…」
タクシーの中で俺がごねるのが嫌だったのだろう。割りとすんなりと乗せてくれたな。そう思ってキリコを横目で見ると、すん、と鼻を啜っていた。
キリコの家に着いて、玄関に入るなりデコピンを食らった。
「いってえ!」
「お前の強引さには慣れたつもりだったけど、ここまでだと呆れるよ。毛布を貸すからソファで寝て。」
「そんなに怒らせるようなこと、俺したか?!」
思わず声が大きくなる。
「してないけど、してる。」
なんだそりゃ。
「あのね、私は今夜は早く休みたいんだ。言ってる意味わかる?」
「わかるけど、わからん。」
言い返してやると、キリコは苛立たしげに天井を見て、俺から離れた。寄るのも嫌だってか。さっきの居酒屋じゃあそうは思えなかったけど。こうやって避けられると追いたくなる性分だってのを、お前さんまだわかってないな。じりじりと近づく俺と一定の距離を置きつつ、キリコは家の中へ入る。まるで押し入り強盗みたいな気分。
「あーあ、わかった。わかったよ。なんだか知らんが、休みたいならそうすればいいさ。ただ俺が飲み足りない事実も認めてくれ。」
やけくそに口を開くと、キリコは露骨にほっとした様子で冷蔵庫を指差して言った。
「冷蔵庫にいくつか缶ビールがある。全部飲んでくれて構わない。何かつまみたかったら…」
隙あり。
縮地の勢いでキリコとの間を詰めて、彼女のくちびるに触れた。
触れたが、それは彼女の手のひらだった。手の向こうから憤慨した声が響く。
「お前は本当に油断も隙もないな!」
「隙を作ったお前さんが悪いんだろうが。今夜はこっちもダメなのかよ。月経か?」
「お前のそういうデリカシーのないところ、本当に嫌い。」
「俺はなんでもハッキリ言う性分でね。」
ふと、俺の頬に当たったままのキリコの手のひらの温度が気になった。手を掴んでみると、若干熱い。非常に気まずそうな、嫌そうな、これからの悪い予感が全て当たってしまいそうなキリコの目と視線が合った。
「お前さん、熱あるな。」
見る間に医者の目つきへと変わる。俺から逃げられる患者はそういない。
「ない。手のひらが熱く感じたのなら、それはアルコールのせいだ。」
「否定する。うわばみのお前が、あんなジュースで酔うもんか。まさかインフルエンザか。」
「インフルエンザの予防接種はしてる。とにかく熱なんか無いから。」
「一応検温させろ。熱がなかったら、おとなしくソファで寝る。」
「断る。無いッたら無い。私はもう休む。この話はもうおしまいだ。」
キリコの顔がどんどん険しくなるのを見て、この問答をこれ以上続けるのは意味が無いと判断した。
「…わかった。でも年越しをひとり寂しくってのは、かなりこたえるものがある…一瞬でいいから…」
渋々口をへの字に曲げて両手を広げた俺の意図を汲んでくれたのだろう。キリコはじっとりと俺をねめつけながら「一瞬だけだからな。」と、俺の両腕の中に納まってくれた。彼女をがっしりと抱きしめた数秒後。
ピピピ、ピピピ、ピピピ
「38.6度か。」
口をあんぐりと開けたキリコから体を離して、手元にある温度計のデジタル表示に目をやる。誤差も多少はあるが、2,3秒耳に入れるだけで検温できる体温計を、このごろの俺は携帯している。それを知らなかった彼女は、まだ呆気にとられている。
「いつからだ。俺の勘だと病院で会う前から、熱はあったはずだ。」
完全に医者モードで問診を始めた俺に、なんとも言えない苦悶に満ちた表情を見せてキリコは呻いた。
「これだから医者馬鹿は嫌なんだ…!」
最悪、もう帰れ、卑怯者。思いつく限りの罵詈雑言を並べ立てて、キリコは寝室でベッドに突っ伏して動かない。
「時期が時期だからな。風邪くらいひくさ。俺とかち合ったのが運のつきだと思って諦めろ。」
以前にもこんなやりとりをした気がするな。くつくつと笑いながら俺は聴診器を取り出した。キリコが拗ねて黙った頃を見計らって、背中から肺の音を聞いた。
「お前の患者の気分がよくわかる。こんな詐欺まがいのことをされたんじゃ、堪ったもんじゃない。絶対に私は仕事を辞めないぞ。お前の策略に引っかかって、無益に苦しむ人を増やしてはいけない。」
「無益かどうかはお前さんにも俺にも決められない。俺は可能性があるなら、それに賭ける。それだけだ。」
ちぇっと舌打ちが聞こえる。
「カッコつけやがって。そういうところも嫌いなんだ。」
怒りに任せて悪態を吐くキリコ。以前ならそれにカーッと来て捲くし立てたもんだが、今となっちゃむず痒い気分になるもんだから、俺もかなり病気。はいはい、と適当に流して脈を取る。
「注射一本打つから、仰向けになんなさい。」
いつも患者に言うのと同じ調子だったのが、勘のいいキリコには我慢ができなかったみたいだ。
「グマの時といい、女になってしまった時といい、確かにお前には体を世話してもらうことが多いのは認める。だけど、今回はただの風邪だ。放っておいてくれ。私も医者の端くれだ。このくらいのことは自分で面倒は看られる。」
がばりとベッドから身を起こして言うキリコの目は、発熱でぼんやりとしてきている。
「わかってる。でもこれは俺の性分だ。具合の悪い人間が傍にいると、何もせずにはいられない。」
「それが迷惑だって言ってるの!」
「ちったあ、頼れ。」
「今じゃなくてもいいだろ。」
「今頼ってくれないと、いつになるかわからんしな。それに今までだって、全然頼ってきてねえし。」
「必要のないときに、頼ることはない。」
ぴしゃりと言い放つキリコが恨めしくなってきた。
「感謝の押し売りをする気はねえよ。」
「そんなセコイことをする人間じゃないだろ。お前は。お前は金と気まぐれで動く。そういう風にしてるんだものな。」
そうだよ。と蓮っ葉に肯定するものの、面白く無い。俺が請求する治療費は5000万とか1億とか大きな額。その反対にいただく報酬の中にはラーメン一杯だったり、当人以外には何の意味も無いガラクタだったり、タダのときもある。大概はその時の感情のままに決めたものが多い。別段それを悔いてはないから、キリコの指摘は間違いない。
「慈善事業なんて大嫌いだ。」
うんざりしたようにキリコは言う。
「お前もそうだよな。」
だんだんと呂律が回らなくなってきている。
「だから、私にも、同じように、対価を求めて欲しい。」
それだけ言うと、とうとうキリコは意識を手放した。失神というよりは眠気に勝てなかった具合だ。
残された俺はと言うと、ああ、そうかとパズルのピースがはまるようだった。頼るという選択肢を選ぶのが許せないんだな。こいつの今までの生き様を見ていれば、誰かに頼ったり頼られたりする、真っ当な人間関係をとことん忌避しているのがわかる。それは俺も同じだから。
頼れば情が湧く。情は腐ったり、澱んだり、碌なことにならない。患者に言い寄られることが多い身としては、情の鬱陶しさはよく身に沁みている。
医師の立場の俺としては、治療イコール愛情に繋がる思考回路が、全くもって理解しかねる。敢えて思考を寄せるとすれば、治療されると患者は、医師に頼り縋る精神状態になるのかもしれない。現在の最悪な状況から救い出してくれる存在として、頼りたくなるのは多少目を瞑れば理解は可能だ。しかしながら、私が頼るのだから貴方もそれを受け入れて当然とばかりに、感情を押し付けてくるのは迷惑以外の何者でもないのだ。そんなものはいらない。
〈頼る〉この言葉の質量が、相手によって全く変わるのがわかる。
キリコに対してはとてもライトに使えていたけれど、受け取るお前さんとしては簡単に受け取れる重量じゃなかったのかな。
「俺は別にお前さんに、何か返して欲しいから、治療するわけじゃねえんだけどなあ…」
ぽつりとこぼした俺の独白は、キリコの眠るベッドルームの暗がりに、見る間に溶けた。
本当はこの後続きがあったんですが、別れ話に進展してしまったのでここまで。


【暖炉の火】
前提:キリコ姉さんにわがままを言ってもらいたいBJ先生
キリコの家に泊まるとなると、さっさと風呂に入って休もうということになった。「一緒に入るか」という俺の軽口は「やだ」と一蹴された。ちぇっと舌打ちしつつ、今夜はどんなわがままを聞いてやろうかとシャボンの中に思考を飛ばした。
風呂から上がると、ここ最近に俺が置いていった寝巻き一式が脱衣所に準備されているのを見て、相変わらず気が利く彼女に世話になりっぱなしなのに気付く。わがまま言ってってお願いする前に、俺がこんなふうにイロイロと心を尽くせる人間ならいいんだけど、残念なことに俺は患者以外にはとんだポンコツなのだ。だからキリコ本人にしてほしいこと、やってほしいことなんかを言ってもらったほうが、何かとスムーズだろう。
体から湯気を立ててリビングに戻ると、キリコは暖炉に向かって何やらやっていた。
「どうしたんだ。」
「ああ、さっき大きな薪をくべてしまって、火の勢いが止まらないんだ。もう火の始末をしたいんだが…」
「お前さんが風呂に入っている間に、火が消えるかもしれないぜ。」
「そう願いたいよ。それじゃ、見ておいてくれるか。」
ああ、と返事して、キリコを見送る。キリコの家の暖炉は煙突が円錐状になっていて、その下に薪をくべる場所が床よりも高い位置に作られている。周りには低い鉄柵こそあれ、ほぼむき出しの状態で薪をくべるスタイルのものだ。昔ながらのレンガ造りの我が家の暖炉とは大違いだ。
暖炉を見れば、確かに大きな炎がゆらめいている。火に当たれば濡れた髪が乾くだろう。ぱちぱちと薪がはぜる音が、静かな室内に響く。それにしても、炎ってのは見飽きないもんだな。一本の薪から出ているはずなのに、同じ色、同じ形が二つとして現れない。ああ、消えてしまう。もっと見たいななんて、つい細い薪を追加してしまう。どうもそんな俺の姿は、風呂から上がったキリコにばっちり見られてしまったようだ。
「初めて火を発見した人類は、お前みたいなのなんだろうね。」
呆れた声を後ろからかけられて、イタズラを見つかったガキのような気分になった。
「炎を見てたら、目が離せなくてな。」
正直に打ち明けると、お前らしい…とキリコは眉を下げる。
「確かに、キャンプファイヤーの楽しみは、何も考えずに炎を見ている時間にあるといっても過言じゃないし。私は今でもたまに、川原へ火を焚きに行くことがあるよ。」
「お前さんまだそんなことしてたのか。」
「さすがに音楽家の名前をかたる場面には出くわしてないけれど。バイクに乗って焚き火だけして帰ってくるだけでも、かなりリラックスできるもんだよ。ひとりで静かにっていうのが良いんだろうね。」
ふうん、と感じ入った様子の俺を見て、キリコはひとつの提案をした。
「ねえ、今夜はここで眠ろうか。ちょっとしたキャンプみたいになるかも。」
ひとつだけの目を好奇心で輝かせて、かわいらしいことを言う。もっとわがままになっていいんだぜ。
「ううーん。俺はベッドの方がいいなあ。」
「わがまま言って良いって言ったじゃないか。」
わざと嫌そうな声を出すと、キリコはむくれて俺を見上げる。その様子がたまらなくかわいい。
「そうでした。そうでした。もっと言ってもらわんと、世界一わがままな俺としては足りないもんな。」
俺の真意を知ってか知らずか、キリコははにかむように、ちょっと下を向いた。そんな彼女の手を引いて、布団を取りに寝室へと向かった。ふたりでわっせわっせと布団を下ろし、リビングのソファとテーブルを除けて、設営する。大人二人が寝っころがるのにギリギリのスペースができた。
薪を追加したものの「きっと夜更けには火が消えて、冷え込むだろうから」と、ありったけの毛布やブランケットを隙間に詰め込む。まるで秘密基地のような様相でわくわくしてくる。となりに立つキリコを見ると、俺と目が合った。俺の表情を見て楽しんでいたらしい。妙に気恥ずかしくなって、にこにこするキリコをぎゅっと抱き寄せた。
キリコと二人で並んで布団に潜り込んで、暖炉の火を眺めると、なんとも言えない安心感があった。外は寒い風が吹いているけれども、布団の中には二人分のぬくもりと、暖炉から届くあたたかさがある。電気を消しても、炎のゆらぎが部屋をほのかに照らす。
「子どもの頃を思い出すよ。」
キリコが静かに語りだす。
「ノエルが近づくと、ユリは決まって私の部屋に来て、ベッドの中でサンタを待つ練習をするんだ。自分の部屋だと小人が見ているかもしれないから、ダメなんだって。どうやってばれずにサンタの顔を見られるか、一生懸命寝たふりをするんだよ。」
「あんなにしっかりしたユリさんに、そんな時期があったのか。」
「そんなにしっかりしてないぞ。ちゃっかりはしているけど。それで、寝たふりをしているうちに本当に寝ちゃうんだ。ユリは一度寝ると朝まで絶対に起きないから、仕方なくベッドの端に滑り込んで、二人で寝た。しかもあの子は大の字で寝てるし。」
ほほえましい思い出に、笑い声がこぼれる。
「子どもの頃の思い出か。俺にはほとんど無いな。」
つい口から出てしまった。爆風にすべてが吹き飛んでしまって、真っ黒に塗りつぶされたように、楽しい記憶が思い出せない。きっと何も無いはずはないのだけれど。
ぱちんと火の爆ぜる音がする。
「じゃあ、大人の思い出、作る?」
いけないことを誘うようなキリコの言葉に、俺が乗らない理由はなかった。シャンプーのいい香りがする髪に指を絡めて、キリコのくちびるを味わう。
「子どもはこんなことしないもんな。」
「どうかな。大人のキスじゃないもの。ティーンの子達ならしてるんじゃない?」
「ふふん。大人のキスがどんなものか教えてくれよ。」
鼻先がぶつかる距離で囁きあう。
「BJがしてくれるんじゃないの?」
ほのかに熱を持つ視線を交し合う。
「わがままなやつ。」
満足そうにキリコは笑って、俺の舌を受け入れた。夕食で飲んだ日本酒で熱くなった粘膜を吸うと、キリコの腕が俺の背中に回る。彼女をそのまま抱えて体を起こした。布団の上に二人して向かい合い、くちづけを交わす。その間にキリコのパジャマのボタンを外していく。キリコは裾をめくり上げて、俺の素肌を探る。その手の動きのままに寝巻きの上を脱ぎ捨てた。キリコも上半身を下着だけにさせると、鼻の頭をくっつけてくすくすと笑う。
深く吸い上げたかと思えば、くちびるの上だけくっつけて舌先を絡めあってみたり、脱がしっこに興じながら長いキスを楽しんだ。もちろん手癖の悪い俺のことだから、やわらかいキリコの体を楽しむのも忘れてない。
「大人のキスの及第点、もらえるかね。」
軽く息の上がった声で問えば、キリコの指は俺の下腹部に伸びる。テントを張った股座にふれそうでふれない位置で指が止まる。
「キスだけで元気になっちゃったもんね。」
「若さかな。」
「大人になるには、まだ時間がかかりそう。」
「インポテンツの方が大人なのかよ。」
軽口を叩きあいながら、お互いの体を盗み見る。暖炉の炎に照らされたキリコの体は、いつもより尚艶かしく見えた。赤い炎の色にそまる白い肌に、濃く伸びる影。光と影が炎のゆらぎにあわせて伸びたり縮んだり。それが彼女の肌を一層立体的に見せる。俺の肌にも縫合痕の僅かな凹凸が、影を染みさせているのが見えるくらいだ。彼女の目にはパッチワークのように見えているんじゃないだろうか。
つう、とキリコの指が俺の腕の縫合痕をたどる。ひとりごとのように彼女は言葉を紡ぐ。
「いつも、この縫い目が見えると、お前の腕の中にいるのを認識するんだ。今夜は、ずっと忘れられそうに無いな。」
「おい、そりゃ忘れてる時があるってことかよ。ひでえな。」
「ひどいのはお前のほうだ。私の意識が朦朧とするまで抱き潰すのだから。」
うっと言葉に詰まる。かなり無理を強いてる自覚があるだけに。
「そりゃお前さんの具合がいいからに決まってるじゃねえの。」
開き直っては見たものの、はぐらかしてばかりでは誤解を招く。ぐっと気を引き締める。
「真面目に言うけどな、お前さんに触れてるときの俺はサル以下のIQになってると思ってくれ。」
ぶっと噴出したキリコに、俺は必死に訴える。これで拗れたら困る。
「わがままになってくれって言ったろ。本気で嫌なときの合図とか決めておこうか?」
「多分お前それも忘れちゃうと思うよ。」
キリコはおもしろいおもちゃを見るようにくつくつと笑う。
「覚えとくって。お前さんに負荷をかけてる自覚はあるんだ。こっちでも俺ばっかりってのは、あんまりよろしくない。まったく言うことを聞かない息子だが、何とか宥めてみせる。」
真剣に言っているのに、とうとうキリコは突っ伏して笑い出した。
「おい。俺は本気だぞ。」
むっとして、キリコに圧し掛かる。まだ彼女は笑っている。「ごめん」とか「止まらない」とか言いながら。いよいよ面白くない。バカにしてんのか。当分笑いが止まりそうに無い彼女を放ってタバコでも吸おうかと思案した時、するりと白い腕が俺の首に回った。
「あのね、性欲って人間の三大欲求のひとつだから、簡単には抑えられないのはわかるし、元男としてはセックスでサル並みのIQになっちゃうのもわかる。だからね、きっとお前が言うところの不肖の息子に、どれだけ説法をしても言うことを聞かないんじゃないかなって予測もできるんだ。」
まだ口元に笑みが残った状態で、キリコは俺を捕まえる。なんだよ、行動する前から失敗が予測されるって話かよ。やってみなきゃわからないと言いかけた俺の言葉を遮るように、キリコは話し続ける。
「本当に嫌だったら、こんな状況になる前にきちんと言う。服を脱ぐ前にね。でもまあ途中で本気で嫌になることはあるかもしれないけど、それはもうそんな状況に身を置いてしまった自分の責任だし。絶対に無理だって思ったら、お前を殴ってでもベッドを飛び出すはずさ。私の性格わかってるだろ?」
「そりゃ、まあ。殴られても文句はねえよ。」
「それにね、さっきひどいって言ったけど、あれは売り言葉になんとやらってやつで…」
「ああん?本当は嫌じゃないって?」
とたんに口ごもるキリコの様子に、なんか隠してるって俺のセンサーが働く。吐け!このやろ!抱きかかえて転がった。俺の上に乗っかった彼女は、随分ばつが悪そうに白状する。
「この前、仕事で知り合った女医さんたちとディナーに行ったんだけど、そこでパートナーとの夜の生活の話になったんだ。みんなそれぞれに楽しんでるのがわかって、おもしろかった。それで、最後に私が話す番になったんだ。」
「ごめんね、勝手に話して。」なんて謝ってくるけど、俺は全然気にしない。むしろ女性同士でもそんな話をするのかと、そっちのほうに興味があった。
「私たちのことをかなりかいつまんで話したつもりだったんだけど、とても驚かれてしまった。何て言うか…ここまでぴったりくるのって、なかなかないみたい。」
肝心の部分がぼやかされた。大体主語が無い。
「わからん。何が驚かれたんだ。何がぴったりくるんだ。」
「言わなくてもわかってほしいけど、きちんと言葉にしたほうがわかる人だもんねえ。お前ってば。」
やっぱり、と観念したように、俺の胸板の上で彼女は項垂れ、やがてぼそぼそとつぶやいた。
「私が潰れるまで、お前が何度でも復活してくることに…驚かれた。」
「な…それって俺が体力バカってことに驚かれたってことか?仕様がねえじゃん。事実なんだし。」
「私も初めはそっちだと思ったんだよ。でも、女を長い事やってるお姉さま方は違うね。」
じっとりと睨んでくるキリコの迫力に、ごくりと生唾を飲み込む。会った事も無いお姉さまの気迫を感じるようだった。
「『潰れるまでイキまくってるのね!サイコーじゃない!』だとさ。」
キリコは言い終わると、ぺしゃんと潰れた。俺もどうしようもなく恥ずかしくなってきた。
「それじゃ、あの、ぴったりってのは、体の相性ってこと?」
俺の間抜けな問いかけに、銀色の頭はこくこくと頷く。
「お前さんがイキまくってるのも、本当?」
銀色の頭は一度だけこくんと頷いて「知ってるくせに…」と恨みがましい声を上げた。
これはまいったな。第三者から認定されるとは思っても見なかった。仕事や信条ではこれでもかってくらい間逆で、相性最悪なんだけど。それはキリコも同じことを言った。でも肌が合うってのも、間違っちゃいねえし…なかなかないって言われるのも悪くない。「いやあ、お姉さま方はお見通しか。恐れ入ったね。」そう言って笑うしかなかった。
ぱちぱちと炎を上げる暖炉も、そんな俺たちを笑っているみたいだった。

家族パロを描いていて、ネーム進まない!うわーん!となって書きなぐったものです。完全にストレス発散です。なのでぶっちぎれの、ぶれまくりの文章です。きちんと小説書ける人はすごい…

2019、念願のサイトを持つことができた年でした。サイトを開設して、たくさんの素敵な方々との出会うことができて、うれしい気持ちでいっぱいです。…後ろ向きで意志薄弱な私は、皆様のあたたかいお言葉や、そっと背中を押してくれるお気遣いに、何度も何度も助けられ、ここに至っています。心からお礼申し上げます。また、家族パロという暴挙を見守ってくださっている方、本当にありがとうございます。
さて、2020はどんな年にしたいか!
キリジャを描く一年にしたい。
そこに至るまでにしなきゃいけないことは、いろいろありますから、それらをクリアしてから描きたいなあ。いいや、描く!間違いなく描くよ!
お正月絵のキリジャの二人、BJ先生は変り種の紋付袴、キリコ先生は現代風にアレンジした某メーカーのものを着てもらいました。最近滅多に描かなくなったキリジャの二人…突貫作成のお見苦しいイラストではございますが、どうぞお納めくださいませ。ブラシってすごい!
いいことが、あなたにも、みんなにも、私にも、ありますように。
また今年もどうぞよろしくお願いします。
トロとパズルのイベントでおせちを作りましたよ。




最後に家族パロ進捗~


いや…イラストのサイズ、何とかならんかな。ランボルギーニをでっかくしたいんだが。
ぐだぐだ言っていてご心配をおかけしましたが、ぼちぼち最終話、描いてます。けじめのイラストを一枚描いたら、腹が決まったというか。これを仕留めることが、当面の一番の目標です。もう充分に射程距離内です。時間を有効に、悔いなくストーリーを完成できるよう、1ページ1ページ大切に仕上げていきます。
拍手お返事もこちらに一緒にさせていただきますね。
***uさま、昨年度は大変お世話になりました。ありがとうございます。お体の具合いかがですか…冬も大晦日に本気モード出してきましたからね。どうぞあたたかくしてお過ごしください。
*こさま、あたたかいメッセージ、ありがとうございました。やさぐれた心に一輪の花が咲いたようでした。またどうぞよろしくです。
返信不要の方、拍手の方、いつもありがとうございます。おかげ様でがんばれます。
皆様にとって幸多き一年でありますように!!
※自サイトなので、まあ、アレな記事です。読まなくていいですよ。いや、ホント※
ヤバイです。ヤバイですよっと。
何が?進捗が。
家族パロの最終話まで来たのに、ネームが全然進まない。
乗り気じゃないのかしら。じゃあどうして?
終わらせたくないのかしら。いやいや、終わらせないと進めないから必死にやってきたんでしょうよ。
飽きた?うーん…あと一歩ってトコでえ?
進まな過ぎて、やんなっちゃって、イラスト描いたり、作文を7本ほど書いたり、逃避しまくってる…これはまずいわなんとかせんとなあ。
まあ…正直、キリコ先生は全然ぶれないんだけど、BJ先生は完全に私の中で迷子になってて、家族パロのクロオと黒男を合体させたらキリジャのBJ先生になるかっつったら全くそうではなくて。
受けを可愛く描いて何が悪い!ウチのBJ先生のハートは初めッから少年じゃい!と、誰に向けてでもなく気炎を吐く有様。
私は何と戦っているんだろう。
寄り道してる場合じゃないな。
キリジャのことは後で考えよう。きっと物語を組み立て始めたら、BJ先生は自由闊達に動き出してくれるはずだから。彼はそういう人だ。信じよう。2020はキリジャを描きたいなあ。どんな形であれ、BJ先生とキリコ先生を好きな気持ちに変わりがない限り。いや、変わる気ないけどね!
まあ、今の倦怠感は、アレだ。FGO5章のイアソンがいい奴過ぎたのと、オリオンがかっこよすぎて号泣したせいだ。なんなんや。男前すぎんだろうがよ。泣くわ。泣いたわ!スマホ握り締めて泣いたわ!チクショウめ。ガチャ引いたら、マンドリカルドが2枚出てくれたから、満足したけど、お前本当にピックアップの中に居る?幣デアの宝物庫の2割開けたんだけど、全然来ないし。このまま行ったら私の林檎と契約されし呪いの人差し指が、諭吉先生を無限に生贄にくべそうで嫌なんや。もうそんなん朕様でこりごりなんじゃ。林檎からの請求見て引いたわ!中古で原チャリ買えるくらいやった。馬鹿か。…もう課金すると死ぬ呪いにかかってるから、いい思い出なんだけどね☆恋に落ちても金は落とさないゾ☆
オタクの勢いで書きなぐって、なお迷走…が、ガンバル~!!

M*** F***ess さま、Thank you!Thank you!Merry Christmas to you!I want to draw more manga next year.I was very glad of a Japanese message.very nice! Ganbari masu!!
***uさま、やー、見つめる先には、おでん屋とかあるんじゃないかと…寒いですからね(笑)
キリジャ一枚絵に拍手を下さった方、「襲われる」気に入っていただけてうれしいです!すんばらしいオーバーラップまで…描き手冥利に尽きます。ごちそうさまです!
世間はクリスマス一色で、ここからお正月に向かって速度が上がっていきますね。一等好きな季節なんです。どうしてなのかはっきりはわかりませんが~不思議です。上のイラストは「さよなら!アローン会」を横目に描きました。楽しかった~
賞味期限の短いイラストですが、お納めください。よいクリスマスを!
自分の寝室にキリコがやってきたのは、つい最近。
秘密基地を明かすような気持ちだった俺よりも、キリコのほうががちがちに緊張していた。
これまではキリコの家でコトに及ぶ場合が多かったし、そうでないときは出先のホテルか繁華街の安宿だった。でもこれからは俺の家も、その選択肢に含まれる。
キリコとの距離が、もっと近づいた気がする。ガキのようにそれを喜ぶ自分がいる。
しかし、とストップをかける自分もいる。大問題があるのだ。言わずと知れたキリコの稼業である。
死神の化身なんて異名を片手に、あいつは世界中飛び回ってヒトゴロシをしている。安楽死なんて聞こえのいい名前なんかクソくらえだ。あいつがやってるのは俺の大嫌いな稼業。やめろやめないの喧嘩を一万回はしていると思う。これは絶対お互いに譲らない。
ただ、それ以外のトコロじゃ案外と気が合うトコロがあるので、あいつとの付き合いは今まで続いてきている。
そんなあいつがウチに来るとなると、些かタイミングが微妙になってくる。
ウチの住所はあちこちにもれているので、駆け込みの患者なんかしょっちゅう来る。ウチで手術して、そのままリハビリまで面倒を見たこともある。この前の媚薬騒ぎの時だってそうだ。これからって時に急患が来た。そのときはキリコは別室にいたからよかったものの、もしカチあっていたら大変だったろう。
俺だけを知っている相手ならいい。だが、俺とキリコの両方を知っているとなると話は違う。
奇跡のオペを数多く行い、生きる尊さを謳うブラック・ジャックの家に、死を商いにするドクター・キリコが出入りしている。こんなことが噂になったら、どうなってしまうだろう。
まず俺の信用はがた落ちだ。オペの依頼は、ほとんどなくなるかもしれないな。風評被害もあるだろう。俺の治療の甲斐なく死んでしまった患者は、実はキリコが殺していたとか言い出す奴が出てくるかも知れん。または俺が治療できないと判断した患者を、キリコに引き渡して、二人でぼろ儲けをしているとか。
そこまで考えて馬鹿馬鹿しくなった。
くだらん。実にくだらん。
俺の信頼とか評判とか、人様が勝手に言ってるだけであって、俺自身になんの影響もない。言いたい奴には言わせておけ。そうやって今まで生きてきた。
ただタイミングがどうこうってのは、うまくやる必要があるかもしれないな。
電話のベルの音が響いて我に返った。
さっそく来なすった。急患だ。
アウトローの医者と蔑まれながら、住所も電話番号もばれてる。これじゃ普通に開業医してんのと変わらんな。
頭をかきながら、患者の到着を待った。

オペは無事に済んだ。ウチにある設備で何とかなりそうだったので、患者は少しの間ウチで入院させることにした。麻酔が効いているから、患者はまだ眠りの中だ。必要な処置を施し、現段階ではこれ以上することはない。
俺も休もうと、さっさと風呂に入って、冷蔵庫のものを適当につまんだ。
時計のタイマーを合わせて、定期的に患者の容態を見る。
入院患者がいるときの生活は、とても制限されるけど、必要なことなのだからするしかない。
患者は順調に回復し、2週間後には自力でウチを出て行った。その間にも何件か駆け込みの手術があったけど、術後はすぐに別の医院へ移動したり、そこまで大げさに安静にしなくても良い程度のものだったりと、うまいこと回せていたんじゃないだろうか。
誰もいなくなって、ようやく一息つける気持ちになった。

我が家の軒下でパイプを燻らせていると、ワインレッドの旧車がやってきた。
俺、この車種に乗ってた時期があるんだよなあ。色違いだったし、年式もグレードも違うの分かってんだけど。どうやって左ハンドルのを見つけたかね。
車はウチの裏手に停まり、ドアの閉まる音がする。
「こんにちは。ブラック・ジャック先生。お時間ありますか。」
沈みゆく夕日を浴びて、色素の薄い髪が金色に輝いて見える。
「こんにちはより、こんばんはだな。ドクター・キリコ。時間は残念だが、ある。」
精々嫌そうに言ってやると、キリコは白い歯を見せて笑った。
千客万来だな。我が家は。患者が立て続いたと思ったら、お前さんまでくるなんて。一人の時間がなくなった喪失感より、キリコが来てくれたことを素直に喜ぶ自分がいた。
キリコは先日俺が貸した医学雑誌を返却に来たのだった。掲載されていた論文の結論に対する意見の交換や推論をするのが楽しい。時間が経つのも忘れて話し込んでしまった。俺の腹の虫がぐうとなるのを聞いて、ふたりで顔を見合わせた。キリコはくつくつと笑うと、本を貸してくれた礼に夕飯を作ってくれると言った。おお、海老で鯛を釣った気分だ。
「冷蔵庫の中、何もないじゃないか。」
キリコが驚いた声を上げる。
「入院患者がしばらくいたからな。買出しもいけなかったし、ためてあったレトルトで何とかなったぞ。」
我が家には患者がいたときを想定して、病院食や俺のメシになるレトルトがいくつも常備されている。あとは霜だらけの冷凍庫に詰め込みまくった冷凍食品。これらは前回の入院患者がいたときに食い尽くしてしまったので、また調達して来ねばならない。
キリコは少しの間、冷蔵庫とにらめっこしていたが、やがて大きく頷いた。
「それじゃあ夕飯の支度をしている間、お疲れの家主様はお風呂でもどうぞ。」
「殊勝なことを。」
「お背中を流してさしあげられないのが残念です。」
ふふんと笑うと、しれっと冗談を交えて言ってくる。
「じゃあ、ゆっくり入らせてもらおうかね。」
嫌味な笑みを浮かべながら、俺は足取り軽く浴室へ向かった。純粋にあたたかい夕飯にありつけるのが楽しみだった。
しかし何もない冷蔵庫を相手にキリコは何を作る気なんだろう。野菜室に芽が出たジャガイモがあったかも。卵はひとつだけあったかな。米はある。キリコがどうするか楽しみで、久々に気兼ねなく風呂に浮かんだ。
風呂から上がると電話のベルが鳴った。
取ると患者がこちらに向かっているという。2,3やり取りしただけで、かなり切迫した症状だとわかった。こうしちゃいられない。
ふりかえるとキリコはいなかった。家の外から車のエンジン音が遠ざかるのが聞こえる。
食卓にはまだ湯気の立つ夕食がならんでいた。

やってきた患者は重篤で、オペに時間がかかった。今回の術後の経過は、ウチの設備では看きれない。そう告げると、患者の親族はすぐに入院できるところを探すから、一日待って欲しいとウチを飛び出していった。
朝日が昇ってくる。
血のついた術衣のまま、椅子に座り込み、タバコに火をつけた。
黄色い光の中に、細く白い煙が浮かぶ。
数時間前に見た色素の薄い髪を思い出す。
ふらふらと台所へ足が向かう。患者が来るまでの間に、あたたかいメシをかきこんだ。ろくに味わえもしなかった。シンクには俺の茶碗だけが残っている。
タバコを深く吸った。
勢いよく吐き出される煙は、台所の空気を汚した。

一日待って欲しいが二日になり、三日になったころ、患者に限界が訪れた。なんとか持たせているところに、やっと患者の親族がやってきた。救急車を連れて。最悪だ。
サイレンの音がいなくなるまでの時間が無限に続くようだった。
ブラック・ジャックの家から救急車が出た。あいつもとうとうヤキが回ったな。そんなことがあっという間に広がるのが予想できた。俺はやるべきことはやったし、手抜かりはない。もっと早くきちんとした設備のあるところに…そんなことを言い出したらきりがない。そもそも俺がやるべきことってなんだ?
呆然とソファに埋もれているうちに、やっと睡魔がきてくれた。
遅かったじゃねえか。ついでに死神も連れてこい。
悪態をつきながら、暫しの薄いまどろみに身を任せた。
次の日、噂をまだ知らない善良な患者を立て続けに手術した。
それから手術の途中で急変して、死んでしまった患者のことが頭から離れなかった。どうして、どうすれば、そんなことが延々と渦巻く。救急車で行ってしまったあの患者はどうなっただろうか。考えても仕方がないのに。まんじりともせずに朝を迎えた。
その次の日は大病院に入院している患者を、こっそりと俺が手術するという、実にモグリらしい依頼だった。依頼してきた医師が「君の家から救急車が出たというのは本当かね。」と聞いてきたのには笑った。噂ってのは普く娑婆に広がるもんだ。
「間違いありません。ご心配なら、私ァ降ります。」
横柄に告げると、疑いの眼差しを向けながらも、俺を手術室へと通した。
設備が整った大病院。大勢のスタッフ。俺の頭はギンギンに冴え渡り、好条件の中、問題なくオペは終了。俺は報酬をもらい、さっさと帰るだけ。真夜中の病院の廊下を足早に歩いた。
だが、折角だ。一般病棟の設備を見せてもらおう。ウチに足りない設備をはっきりさせたかった。そんな思いつきで病棟に潜り込んだ。ぎらぎらした目で廊下から覗き込み、空いている部屋を探しているうちに、暗い部屋の中に人影があるのに気付いた。
誰だか、すぐにわかった。
キリコだ。
仕事をたった今終えて、帰り支度をしている。
会いたくない。
今のお前に会いたくない。
なのに俺の足は動かない。
夕暮れの光の中で笑ってくれた頬は、蝋のように固く。
金色にさえ見えた髪は、闇を吸って重く。
会いたかったのに、会いたくない。
キリコが俺に気付くのは時間の問題だった。
「…こんばんは。ブラック・ジャック先生。」
「また人殺しか。ドクター・キリコ。」
俺の口は常套句を再生する。
「人殺しじゃなくて……」
言いかけたキリコは、俺を見つめたまま黙ってしまった。眉間にしわを寄せると、俺のそばを風のように通り過ぎる。「外で話そう。」すれ違うときに、そう聞こえた。
ワインレッドの旧車が暖機運転をする。俺も今日は車なんだ。そう言うと「じゃあお前のところに行ってもいいか。」と、強い調子で言われた。仕事帰りの死神の化身を家に上げるブラック・ジャックも面白いか。そう思ったから、頷いた。

深夜のハイウェイ。
俺のあとを、キリコがついて走っている。
追いかけるふうでもなく。追い越すふうでもなく。
まもなくウチに着いた。俺はいつもの定位置に駐車し、キリコは裏手へ停めた。
ウチの中に入ったキリコは、眉間のしわをもっと深くした。なにかに怒っているみたいに見えた。俺の無様な失態も、とっくにキリコの耳に入っているのだろう。罵倒されるか、張り倒されるかしたら、ちょっとはすっきりするかもしれない。
「お風呂借りてもいい?」
キリコの発言が理解できなかった。俺の返事を待たずに、キリコは浴室へ向かう。一度しか使ったことがないのに、よく場所を覚えてるな。なんてぼんやり思った。やがてシャワーの音がした。
ああ、好きにしろ。どうでもいい。コートもかばんも何もかも重い。引きずるようにしてソファにのせて行く。ジャケットを脱いで、タイに指を掛けたとき、目の前に影がさした。
キリコが俺の前に立っていた。白いシャツにスラックスをはだしで。石鹸のかおりが、特別異質なものに感じた。
「簡易的な消毒しかできなかったが、許して欲しい。」
そう言うと、俺の手をそっと取った。両手を包み込むようにして。そうしているうちに、俺は自分の指がとても冷たいことを知覚した。とたんにがくがくと震えだす指が疎ましい。震えを押しつぶす勢いで、キリコは俺の手を握った。キリコの体温が手の甲から沁みてくる。
「今日のお前、若いときの私にそっくりだ。」
手の強さとは違って、やわらかい口調が耳をくすぐる。
「ご飯食べてる?」
「…いつ、食べたっけな。」
「ちゃんと寝てる?」
「ここんところ……」
「重篤な患者が居たんだね。においで分かるよ。よく嗅いだにおいだ。その患者を一人で看ていたってところかな。」
「まあ、そんなところ。」
そんな会話をキリコと一切視線を合わさずにした。ただ手の温みだけが分かる。
「コーヒーが飲みたいな。台所のどこにあるか、教えてくれるかい。」
俺が「うん。」というまで、キリコは俺の手を握り続けた。
あたたかいコーヒーを飲むと、少し落ち着いた。
「俺は開業医じゃないってのに、次々と急患がくるんだぞ。千客万来だ。」
「俺のウチに救急車が来たんだぜ。しかも患者を運び込むんじゃなくて、連れて行く方。」
「噂ってのはたちどころに広まるもんだ。それをまだ知らない善良な患者たちを手術したよ。」
ここ数日の最悪な出来事を、自嘲気味に話すことすらできた。コーヒーになにか入れたのだろうか。
「笑えるな。」
キリコが穏やかに言う。とたんに視界が歪みだす。ああ、どうして。
「お風呂入っておいで。」
そういうキリコの助け舟で、浴室にたどり着くまで、なんとか持ちこたえた。シャワーの中に雫を隠すことができたから。

風呂は命の洗濯なんて言うのを聞いたことがあるけれど、あながち無い話ではないかもしれない。久しぶりにきちんと風呂に入れた爽快感あってか、さっきの自分とは比較にならないくらい思考はすっきりしていた。ただ勢いで風呂に入ってしまったので、着替えを持ってこなかった。
バスタオルを腰に巻いて、うーんと唸る。自分のウチなんだし、着替えを取ってくればいいだけなのに、キリコがいるとバスタオル一枚で出て行くのも憚られる。廊下まで出てもじもじしていたら「湯冷めするよー」っと、台所でカップを洗うキリコの背中越しに声をかけられてどきっとした。コイツ背中に目がついてるのか?くそ、どうして我が家でこいつに主導権をとられにゃならんのだ。
いらいらしながらバスタオル一枚でうろつく俺を、ニコニコしながらキリコが見ているのに、俺はまだ気がつかない。

寝巻きに着替えた俺を見て、キリコは腰を上げる。
「それじゃあ帰るよ。よく休んでね…」
やさしい微笑を浮かべて言ってくれるのは、とても胸に来るものがあるんだけど、違うだろ。
「お前さん、俺の母さんになるには大分若すぎるぞ。」
俺を引っぱりあげてくれたのには感謝するけど、そこは違う。幼い頃の記憶のように、俺はお前に母さんのように頼ったりしない。無償のなんとかってのはお前さんには似合わない。メシ作ってくれたり、風呂に入れてくれたりだけになっちゃうのは、若い役者に肩入れする大女優みたいで嫌だ。
それに俺はどっちかが我慢してるような関係は大嫌いだ。けちだからな。忘れてないぜ。お前さんが晩飯だけ残して消えてしまった夜のこと。
「面倒看てくれるんなら、最後までだろ。」
ぱっと両手を広げた俺を見て、やがてそろそろと近づいてきた。手を広げっぱなしってのも、なかなか恥ずかしいな。焦れる俺を上目遣いに見て「いいの?」と寝ぼけたことを抜かすので、そのまま腕の中に閉じ込めて出られなくしてやった。

電話のベルの音がする。
鳴り止まないので、仕様がなく出る。
急患か。
「現金で5千万円。出せなきゃお断りですぜ。」
相手は勝手に電話を切った。
これこそ、モグリだろ。
自由業。
寝巻きの下だけつけた俺は、また寝室へ戻る。
かわいい女が待ってる寝室へ。