虹の雫はエメラルド

キリジャバナー2

※厳重注意!!※このテキストには以下の項目を含みます。

chapter 01、02 ・サディスティックな表現 ・露出プレイ(気味)

chapter 02 ・テンション乱高下

chapter 03 ・♡喘ぎ(いろいろとひどい。キャラ大崩壊)

ウチのキリジャのイメージを相当ぶち壊します。地雷の多い方、ご遠慮ください!

罫線枠うえ

※表の【エントランスでの仕返し】の後の話になります。

chapter 01

警察から飛び出し、そのまま手を引かれてキリコの家へ。

玄関に入るなり唇をふさがれた。

多分文句をずっと言い出しそうな俺を黙らせたかったんだと思うけど、キスをしながらタケノコでも剥くように、どんどん俺の衣服を脱がせていくのはどういう了見だ。ちょっと待て!ここ玄関だぞ!

お構いなしにキリコは俺をすっかり裸にして、ドアに胸を押し付ける姿勢を取らせた。くっそ、こういうときにコイツとの体格差が憎い。長くて白い指が俺の股に伸びるのを感じて背筋が凍る。

「やめろ!ここでおっぱじめようってのか!?」

「さっきのもあるんだけど、なんだかね、見せつけたい気分なんだ」

「何を言って…んっ」

首筋を甘噛みされて体が震えてしまう。誰もいない暗い玄関で、誰に見せつけるってんだ。わけわかんねえ。キリコの意図が分からないまま、体はどんどん熱を溜めていく。ちょろすぎる、俺。だけど昨日のあいつの姿が頭にあるから、これくらいは別にいいかななんて思ったりもしている。

「あう…」

背中にあいつの舌を感じながら、熱くなりはじめたペニスを握られる。上下にしごきながら長い指がまとわりついて、肌が電流を帯びたようにひりつく。俺は無意識につま先立ちになってしまい、ドアに縋りついて耐えるだけ。玄関でしてるってのが気になって仕方がない。声をひたすら我慢した。

「ん…う、…うう…」

「いつもみたいに声を出せばいいのに」

「できるか…ッこんなところで…」

キリコは笑って、俺の尻にすっかり固くなったソレをスラックス越しに当てた。心臓が跳ね上がる。

「これが、欲しい?」

空唾を飲み込んだ。認めたくないが、大きな快感を知ってしまったせいだ。アレで貫かれながら達してしまう、あの瞬間を。思わず力が入ってきゅっと引き締まった俺の尻をなでながらまたしごくから、ぶるりと肩が震えて、途切れた吐息が漏れる。

「は、あ、あ、…だ、だめ…だ」

「なにが」

キリコの低い声が耳朶を濡らす。それだけで。こぼれたカウパー液が、きっと玄関の床を汚しているだろう。キリコの親指が鈴口をぐりぐりといじめる。ビリビリ背筋を走る快感。

「出る…出ちまう…っ」

射精感が最高潮に募る直前、玄関の呼び鈴がなった。

「宅配便です」

血の気が引く。

ドア一枚隔てた先に人がいる。

どうしよう。

こんな姿で。

こんなこと。

「ああ、少し待ってください」

さらりと応対して、キリコはドアの蝶番側の壁へ俺を移動させた。

大混乱をきたす頭。心臓がバクバクいってる。今のうちに隠れないと。

俺が動こうとする前に、キリコはドアを開けた。

「!!」

フリーズする俺を一瞥もせずに、キリコは平然と外から差す光を一筋受けている。何考えてんだ。こんな姿他人に見られたらお終いだ。

だけど蝶番側にいるのが幸いして、少なくとも今の状態ならドアを開けても俺の姿は見えないはずだ。なのにどうして、キリコは俺の体を解放しない。俺の腰を抱えたまま、ドアを少しだけ、俺の姿が見えないギリギリまで開けて、宅配業者と会話する。

「時間通りだね。荷物を先にもらおうか」

キリコの指が、さっきまで破裂寸前になっていた俺に触れる。ゆるゆると握られるだけで、また熱が灯る。どうして。こんなことしてる場合じゃないのに。俺、こんな変な趣味なんかないのに。両手で口を抑えて、上がる吐息を必死に堪えて、涙が出そうになる。

「はい。こちらになりますね」

大きめの封書サイズの荷物を受けとりながら、あいつは俺に刺激を与え続ける。脂汗をかきながら、やめろ、やめろと心に念じてもあいつに届くはずもなく、唇を噛みしめて声を殺した。キリコが荷物を廊下に放る時に、再び深く握り直された。逃げられない。

「受け取りのサインをお願いします」

「ああ」

さらさらとペンが動く音がする。早くサインを書いて、業者なんか返してしまえ。早くいなくなれ。

領収サインを書いた紙を業者に渡す瞬間、キリコはペンを落とした。

かつん、と軽い音。

ペンは俺たちの足元に転がる。

「すまない。今、拾うよ」

俺を握るキリコの指の動きが早くなる。嫌なのに、嫌でたまらないのに、バチバチ頭の中で白い火花が飛ぶ。

「いえ、私が拾います」

床に転がったペンを拾うためにしゃがんだ宅配業者が何を見たかなんて考えたくもない。俺は固く目を閉じて、できるだけ身を小さくすることしかできなかったのだから。

「ありがとう。また頼むよ」

一言も発しない宅配業者の前で、キリコはゆっくりとドアを閉めた。

かちゃり、とドアが閉まった瞬間、抗う手段もなく、俺は射精した。

白いしぶきが壁を伝い、届かなかったものはぽたぽた床にこぼれていく。荒い息を吐いて俺の足はみっともないくらいに震えて止まらない。体全体にどっと汗をかくのがわかった。

「気持ちよかった?」

キリコが腿に手を這わす。ぴくりと反応する体が恨めしい。

「業者さん、ずっと床を見てたよ。何が見えたんだろうね」

背中越しにかけられる涼しい声が憎い。

「白々しいこと、抜かしやがって。こんな辱め、受けたことねえ…殺したい……」

わかってるよ。こんな息の上がった真っ赤な顔で睨んでも意味なんかないって。案の定、キリコは意にも介さず俺を浴室へ連れていき、自分が玄関の掃除をしている間に汚れた体を洗うように言った。外側だけじゃねえって意味だろ。ちくしょう。

どうせこれからすることがわかってるんだし、ざっと湯を使った後、素っ裸でリビングに出た。

キリコは少しだけ眉を動かしたが、沈黙する俺に近付くと、自分もシャワーを浴びてくると言い、俺の頬にキスをした。いつもより長風呂なあいつが出てくるまで、俺は裸のままリビングをうろつく羽目になった。

罫線枠した

chapter 02

手を引かれて向かうのは寝室。野蛮な玄関の次は紳士的にって事なんだろうか。しかしここでもキリコはいつにもない行動をする。寝室に一つしかない窓を開けたのだ。嵌め殺しかと思っていたのに、窓が開いたことの方が驚いた。

「おいで」

ベッドに誘うあいつを睨む。

「なんのつもりなんだ。さっきから変だ」

「そういう気分なのさ。言葉できちんと説明した方が良いか?」

「いい。どうせろくでもない理由で訳わかんねえだろうし」

「じゃあ、つきあってくれるね」

口元に弧を描くキリコは、とても機嫌がよく見えた。それがとてつもなく嫌な予感しかしなかったのだが、ここまできたら頷くしかなかった。

キリコはそれは丁寧に準備した。魚の下処理をするみたいに。皮を剥がれ、骨をこそぎ落とされ、血合いの一滴に至るまで取り除かれる。俺の体中がすっかり快楽の一言になるまで。

だけど最後まではたどり着けない。キリコが俺の触れて欲しい所に触れないから。わかってて、あいつはずっとそこを避けている。

「いい加減に、さわれよ」

苛立つまま呟けば、待ってましたとばかりに笑うあいつ。殺したい。

「もう一回射精したらね」

じゅっと乳首を吸い上げて歯で軽くかじられると、嫌で仕方ないのに甘く痺れてしまう。俺が胸の先をいじられるのを嫌がっているのを知っていて、あいつはわざとやっているんだ。先程精を放ったペニスはくったりと俺の腹に倒れているのに、キリコの手ですぐに立ち上がる。もう嫌だ。そこだけじゃ足りない。俺が欲しいのはこれじゃない。理性が欲求に食いちぎられてぼろぼろになりそう。キリコの手を払いのけて、ついに俺は脚を開いた。

「ここ、さわれって言ってんだよ。もうこれ以上は、御免だ」

枕元のチューブを投げつけると、キリコは「ハイハイ」とあっさりジェルを指先に出して馴染ませた。その様子を見つめながら、自分の後孔がひくついているのがわかる。浅ましさに泣けそうだ。ぴとりと指の腹があたったときには、肚の中がきゅっと収縮したのがわかった。期待してる、俺。くるくると人差し指がまわりをなぞっている。よわい感触がまだるっこしい。

「そ、それ…!もう、中に入れろよ」

「俺のペースでやらせろよ。まわりもきちんと塗っておかないと、痛いのはお前なんだから」

「そんなこと、知るか!」

「ほら、すぐそうやって怒る。そういうのもお前なのはわかってるんだけどね、素直になった方がやりやすいよ?俺としても」

ゆっくりと、指が入ってくる。わずかばかりの開放感。でも違う、これじゃない。俺が欲しいのはこんなものじゃない。くちくちとジェルの粘着音が耳にねばつく。指が増えていく質量がまるでカウントダウンだ。やがてキリコは肚の中に円を描いて俺の前立腺を見つけ出す。甘くて尖った刺激に言葉を失う。

「あ…っ」

こんなのじゃない。俺が欲しいのは、もっと、もっと。

ぴんと立ち上がったままのペニスを触ろうとするキリコの手を払う。まだ触らせるもんか。

「欲張りだね。お前は」

「知ってる、だろ」

激しくなった指先の動きに快感が走る。まるではじけるキャンディ。パチパチ、ピチピチ、痛いくらいに刺激的。

シーツを引っ掴んで、絶頂に達しそうな体を引き留める。まだだ。この先のものが欲しい。

ずるりと引き抜かれた指の代わりに宛がわれた熱の塊に、体全体が戦慄いた。コレに貫かれる快感を、俺の体は十分に知ってしまっている。俺が欲しいのは、これだ。

突然、キリコの片目が俺の前に迫って銀色に視界が失われる。キリコは銀の帳の中から強い口調で囁いた。

「欲しがれ」

アイスブルーがバーナーの炎のように見える。

「欲しいって、言えよ」

首を絞めそうな距離で、あいつの唇がどう動くのかはっきり見える。ああ、そうか。こうすれば良かったのか。半ば強引にキリコの首に腕を回す。鼻の頭をくっつけて言ってやる。

「全部よこせ」

キリコの目が三日月に歪む。

「欲しいって言えたら、やる」

「黙ってよこせ」

くん、と腰を動かせば、キリコの長物を下から擦り上げる形になる。

「欲しくないの」

意地悪く笑うキリコの片目をぴしゃんと塞いで、耳に早口で伝えた。

「欲しい」

それだけ言っただけなのに、今までの緊張感が切れて、俺の心は羞恥に塗りたくられる。うわー…これ、恥ずかしい…頬が真っ赤なのがわかる。熱いもの。

素直になったほうがやりやすいってキリコは言うけど、その後の事考えてるんだろうか。「欲しいって言え」っつったから「欲しい」って言っただけなのに、どうしてこうもこっぱずかしいんだか。キリコの顔を見られなくてそっぽを向いていたら、がばっと全身抱きしめられた。ぎゅうぎゅう苦しい。

「あげる」

キリコの顔は全く見えなかったけど、声はなんだかうれしそうだった。

「全部…は難しいかもしれないけど、あげるよ」

アレが全部入ったら肚が破れるんじゃないだろうか。できる範囲でかまわんぞ。いいな。そう言ったらキリコは「善処する」と軽く流して、俺の後孔にぴたりと狙いを定めた。キリコのが当たっているのを感じて、胸が変な音を立てる。もうすぐ、アレが来る。

「そんなに物欲しそうな顔しないで」

くすくす笑うから、ちょっと心配になった。

「そんなに締まりのない顔、してたか」

「ううん。何と言うか…くすぐったい気分になっただけ」

相変わらず何を考えてるかわからんと思っているうちに、キリコは中に押し入ってきた。

「…ん、んっ」

軽い圧迫感と、とびきりの開放感。ああ、お前さんが、ここに来るのを待ってたんだ。

「あ…うっ……」

はくはくと息を吸う俺にキリコはキスの雨を降らせていく。広い背中に手のひらを当てて、でっかくて熱いかたまりを飲み込むことだけに没頭した。ピリピリ入り口が痺れていく感じ、嫌いじゃない。

「はッ、はあっ…はあ…、…」

浅くなる呼吸を意識して深く吸い、みちみちと太いところまで飲み込んで、キリコが中で馴染んでいく感覚に浸った。粘膜がどこもかしこも熱い。入っただけで気をやりそうとか、ホント化け物クラス。でも、今日はいつもより上手く力を抜けて、楽に入っちゃったかもしれない。

ふうふうしてたらようやく落ち着いたけど、キリコが俺をホールドしたままぴくりともしないので、ぺちぺち肩をタップする。

「キリコ?どうかしたか?生きてるか?」

「…生きてる、けど、まずい」

「どこか痛むのか?!」

「あ…っ、待て、動くな…ホント、動かないで」

変な奴。あれだけじらしておいて、更におあずけは厳しいなあ。このままがっつり来て欲しいのに。…全く仕様がないなあ。昨日から特に変だったし。

隣で枕に突っ伏して動かない銀色の頭を抱えて、俺の中に納まったあいつを感じた。とくとく脈打つのが分かるみたい。結構奥まで入ったななんて思ってたら、きゅっと肚に力が入ってしまった。途端にキリコは身震いして俺の腕の中から飛び起き、切羽詰まったように短く叫んだ。

「すまん!無理!」

荒っぽく腕を掴まれて、ごつんと突き上げられ星が飛ぶ。困惑と快感が綯交ぜになる俺を置いて、腰を打ち付ける動きをキリコは止めない。

「い、いきなりすぎる、ぞ!」

「だから、すまない、って」

謝罪するみたいにごりごり前立腺をしごかれたら、肚の中が締まるのは俺の無意識だ。一層唸るキリコの動きに俺は翻弄されるしかなくて、訳が分からないままどんどん追い詰められていく。弾けそうになって、目に入ったのは、窓。そうだ。窓が開いているんだった。咄嗟にシーツを噛んだ。

「ん~~~~~~~~ッ!!」

「……ッア、ああ…っ」

強く深く穿たれ、チカチカする俺の真横に、銀の髪が崩れ落ちた。

「穴があったら入りたい」

「こんなに深刻に冗談言ってる奴、初めて見た」

さっきまで入ってただろうに。

マットレスにひれ伏して、頭の上で手を組んでるキリコは、怒涛の賢者タイム。

「20代以来だ。最低すぎて言葉が見つからない」

いや、喋ってるからな。隣に寝っ転がって羽根布団を頭までかけてやる。昨日高熱出した体だ。冷やすのは良くない。

「丁寧に調理したロティサリーチキンをアリゲーターの川に落としちまった気分」

俺は鶏か。

「お前さんも素直になれって事なんじゃねえの。俺はなったよ。ちゃんと言ったし。『欲しい』って」

「傷口に塩と酢と唐辛子摺り込むの、やめてくれないか」

「言わせたんじゃねえかよ」

「カラシとワサビが追加された」

更に打ちのめされるキリコ。俺が打ちのめしたっぽい。事実なのに。でっかい体が完全に伸びてる。

「なあ、これでおしまいなのか?」

キリコがもうダメならしかたないけど、俺としては全然なんだよなあ。じらされた割に、あっけなかったし…これはこのままキリコに言うと生命活動に支障をきたしそう。やさしい俺は言葉にするかわりに、一緒に羽毛布団に潜ってキリコの背中に頬をこすりつけた。

薄暗い布団の中で、もぞもぞと体の向きを変え、戸惑うようにキリコは俺の肩を抱いた。

「すっごいカッコ悪いんだけど、いいの」

「大したことない。むしろブラックパールゾーン激熱で驚きと感動」

「その例え…軽いなあ…まだ海物語打ってるの?」

「たまにな。お前さんはピエロの台で打つのやめたんだっけ。つか軽くていいじゃねえか。そんなの言ったら俺なんかどうしたらいいんだ。いっつも醜態だぞ」

「お前は違うよ。醜態なんて思ったことない」

「俺だってそうだ。今のお前さんをネガティブには捉えてないよ」

布団の隙間から少しだけ差し込む光に、キリコの顔が見えた。眉が下がってる。そんな顔できるんだ。悪くないぞ。人間臭くて。そうだよ。にんげんだもの。だから俺はこう思うんだよ。

「カッコ悪いとかじゃなくて、『俺の勝ち』って」

ぴきっとキリコは固まった。

勝者のハグだ!光栄に思え!ぎゅっとキリコに抱きついて、勝利宣言。

「俺の勝ち!お前の負け!」

おかしくてたまらなくて、げらげら笑った。完全勝利だろ。ふつうの奴なら、きっとこんなことしたらヘソ曲げるんだろうけど、お前さんは既に曲がりまくってるからな。ほら表情が戻ってきた。

「わーかった、わかったよ。チャンプ。一回仕切り直すチャンスくれないか」

半分諦め、半分負けん気。そんな口調。

「よしよし。俺は大層機嫌がいい。許してつかわす」

「…後で覚えとけよ。下でコーヒー飲もう」

「甘くて熱いのがいい」

「エスプレッソにしようか」

素っ裸で二人して寝室を出る。キリコは黙って窓を閉めた。教団で後藤を誤魔化すために見せつけるキスやなんやとしていた件があるから、まさかこいつ本格的に羞恥プレイに目覚めたりしないだろうな。一抹の不安を覚えつつ、腰にバスタオルを巻いたバリスタが淹れるエスプレッソを待った。

罫線枠うえ

chapter 03

砂糖を5杯入れたエスプレッソを飲んだ舌と、ノンシュガーで飲んだ舌が絡まる。

「よくあんな苦いの砂糖なしで飲めるな」

「後から甘いもの食べるってわかってたら、いらないでしょ」

「もっと砂糖入れとくんだった」

くだらないことを話しながら、短いキスを重ねる。

キリコは俺の髪を何度も梳く。社では野良猫、野良猫君と呼ばれていたのでブラッシングかと笑えば、触り心地がいいと白髪になった部分を撫でる。何がいいのか知りたくて、俺もアイツの銀の髪をくるくると指に巻いてみた。俺の髪質とは全然違う。細くてつるつる。ときどきぱさぱさ。うん。さっきキリコが言ってたくすぐったいって感じが分かる。

お互いになんとなく視線が合わせられずにいるけれど、唇を重ねる時間が長くなっていく。指に髪が絡んで、キスに没頭。やば…酸欠…

ぷはっと唇を離せば、目の前には照れくさそうなアイスブルー。多分、俺も同じ顔してる。

ゆっくりと唇が重なる。そのまま二人してマットレスに沈めば小さく軋むベッド。

珍しくキリコの舌が熱い。口腔を舐られて、舌先を絡め合う。俺の下唇を食んで、名残惜しそうに離す。唾液のブリッジ。俺の方からもあいつの薄い唇にかじりついた。

キスに夢中になるうちに、どんどん体が火照っていく。キリコの指が触れる個所が火傷しそうなほど熱い。乳首を吸われても、さっきよりは嫌じゃない。甘い刺激が満ちるだけ。思わすのけぞる。

「素直なお前はかわいいね」

「かわいいって言われても嬉しくない」

「正直な感想なんだ。他意はないよ」

ちょっと反応に困って、上目遣いにキリコを見つめる。そんな俺に、これ以上ないってくらい蕩けそうな視線が注がれる。むしろ他意があって欲しい。

いつもの剣呑な雰囲気が嘘みたいに存在しない。たまにはこういうのもいいのかな。

準備ができた体はたやすく開かれ、再び時間をかけてキリコを受け入れる。いきなり押し入らないアイツの気持ちを少しだけ思った。ゆるゆると入り口を擦られて、漣のような感覚が押し寄せる。

「ここ、好きだよね」

前立腺をなでるようにキリコは動く。やわらかい快感が満ちて、繋がっているところがあたたかい。胸が詰まって、小さく頷くのが精いっぱいだった。そんな俺の額にキリコは軽く当てるだけのキスをした。

漣が寄せて返して、小さなピークを生む。その波に身を任せるのはなんて心地いいんだろう。

「…ッ…あ、あっ…あう……」

「もっと気持ちよくなっちゃおうか」

自分から言ったくせに、名残惜しそうにくっついていた体を離すと、キリコは腰を使う角度を変えた。

ずちゅ、ずちゅ、潤滑剤の粘り気のある音をたてながら前立腺が圧迫されればたちまちに、たまっていた快感が全身に弾けて飛んでいく。刺激に硬直する腕を捕まえられて、キリコの肩に導かれる。流れるように。自然にそこにあるかのように。キリコにしがみついて揺さぶられて頭の中がぼやけていく。

「キリコ、イく、かも…」

「好きな時にイっていいよ。付き合うから」

「…は、あ…」

罪滅ぼしとキリコは笑った。そうだった。俺は勝者だった。じゃあ遠慮はいらないよな。キリコが俺の勃ち上がったものを握る。ソレ、いい。我慢できそうにない。思えば今日は変な我慢ばっかりしてる気がする。

粘り気のある音が、ばちん!と肌同士がぶつかる音に変わる。我慢するなと言わんばかりのキリコの動きに、俺は抗うのをやめた。

「ああ!来る!……あああッ!」

脳天を突き抜けるように稲妻が走り、快楽物質が全身にフラッシュしていく。

背中を焼く甘い刺激が熱くなった先端から迸る。

ぴゅくぴゅくと腹にこぼれそうになる飛沫を、キリコはティッシュで器用に受け止めてくれた。最後まで搾り取るように、達したばかりの鈴口を固い掌で刺激するからたまらない。腰を跳ねさせて悶える羽目になってしまった。

「そ、れ…やめろ…ッ♡」

自分の口を慌てて覆った。なんだ今の声?!

「すごく、いいね。その声」

にやーっと笑うキリコはチェシャ猫。俺はマーチ・ヘアになりかけ。野良猫の次は発情期の兎かよ!あいつはティッシュをダストボックスにシュートして、まだ引き抜かれていない凶器で俺を刺した!

「っ…あ、あーーーッ♡」

一体どうしたって言うんだ。こんな媚びるような声出したくない!

「いや、だ!こんな声…♡」

「そうだね、普段のあんたからは想像できないくらい、甘い声出してる」

「嫌だ!やめろ、よ!聞くなあァァっ♡♡」

こんなとき「やめろ」なんて言っても聞きやしないのは経験上よくわかってるけど、言わなきゃやってられない。思った通りキリコの腰は一層リズミカルになる。いいところを執拗に穿たれて、自分の中がうねっているのがわかる。

「聞かせてよ。初めて出す声なんだろ」

「こ、こんにゃ、んんっ♡こん、な、声ッ♡誰にでも、聞かせる、はず、にゃ♡…ないだろ!」

「それは良かった。じゃあ、今は俺だけだ。もっとスマートにやってあげたかったけど、こんな声を聞かされたら…難しいね」

「…なん、れ、うれしそう♡なんだ…ッ♡」

「はは、うれしいさ。かなりおかしかった最近の俺が、元に戻りそうなんだから」

「ううううう~~~♡♡♡自分のためかよ!」

とんでもないとキリコはキスをする。キスされた俺の頬はむくれて真っ赤になっているのにお構いなしと来た。自己中野郎は更に俺を責める。もっと啼けと言わんばかりに。あたまおかしくなる。

「結局さ、俺もひとりの男だったんだって、思い出せたんだよ」

「う、あ♡にゃ、んの話…?」

もうおれはぐずぐず。

「そうそう、にゃんの話だよ。猫を飼っていたつもりが、実は猫に傅いていたってやつさ」

「あーッ♡♡♡そこ、そこやだ♡やめろ♡や、めろォ♡♡♡」

「好きでしょ、ココ。知ってんだから。素直になりなさい。さっきのお返しだ。リベンジマッチ、俺の勝ちでいいの?」

「ううー♡♡負けるのも、やだーッ」

あらがおうにも、おれのどたまはすでにぱーになっていて、へんなこえでわめくことしかできない。にゃんにゃんいってばかみたいだ。すなおになるってどうするんだっけ。ああだめだ。かんがえられない。せめてひっかききずつけてやろう。っておもってるうちにでっかいのくる。

「ん゛------♡♡♡!!!」

「いった…これは血が出たな。いいや、もう。好きなだけ引っ掻いてよ。でもシーツを噛むのはナシ。ほら、ここもいいよね。奥まで行こうか」

うつぶせにされて、こしをたかくもちあげられて。これやばいやつやばいやつ。

「あ゛ーーーーーーッ♡♡♡!!!!ーーー…っ♡♡!!」

「あー、派手にイったねえ。大丈夫、シーツくらい構わない。なんならマットレスごとでもいいくらいだ。思いっきり、気持ちよくなって」

がくがくゆさぶられることしかできない。ひとつきされるたびにおくがこじあけられる。

「……っあ♡♡ふ、あ♡……♡♡」

「お前の中がすっごいことになってる。さっき誤射してなかったら、間違いなくやらかしてた。いいね。本当にお前の中はいい。熱くて、熱くて、滾ってる。その上…括約筋はよく鍛えられてるし、吸い付いて離れない。あー、ほら、食べてる…無意識、だよなあ。全く………こんなの戻ろうにも…………どうしてくれるんだろうな…」

えろおやじみたいなこといってる。おまえのかってじゃねーか。

「知識と実施は別物だ。まさか直腸が…あ、ここ結腸だ。最近わかってきたよ。あったかくて、やわらかいとこがぱくぱくしてるの、わかる?」

わかるもんか。どでかいのでひとのなかかきまわしやがって。ちかちかひかりがとぶ。もうでない。でないのに。

「…やら…♡、もう、やらあ…♡」

「いいのは中だけじゃなかったね…顔全体がピンク色だ。目までとろんってしてる。ほら涙と涎ふいてあげるから。ああ、にらむなよ。かわいいって意味だから」

「ばかきりこ…」

「………俺も相当病気だ」

「へあっ♡♡ほんとに、いやだ!も…」

こんどはまたあおむけで、すごいかくどでこしがあがってる。あしはおりたたまれて、ひざがまっとにつきそう。しらない。こんなしせい、しらない。ほんきのかおしてる。やめろ。やめろってば。こんなのしぬ。

ごちゅっ

「…ひ」

ごちゅっ、ごちゅっ♡、ごつ、ごつ♡ごつん♡ごちゅん♡♡!ごちゅん♡♡!ごちゅん♡!♡♡

「う、あ!♡♡♡…っア♡ひ…イクっ♡イクっ♡こっ……これだめ、これらめ♡♡♡!!」

おくまでいっきにえぐってる。

「ダメじゃないよね。ほら自分から飲み込んでる。全部わかるよ」

「やらって、ば♡♡……~~~~~ッ♡うあ、イクのとまん、ねえ♡あ、ぐ…ッ♡ううう~~♡♡♡もう、やら♡イクの、やだ!!もう、イキたく…う、うっ♡♡にゃいッ♡♡や…っ♡やめろってば!♡…っく♡♡また…~~~ッ♡♡♡」

「もっとイって」

「ばか!♡…ッ♡ばかきりこ!う、動くにゃっ♡♡♡きらい、だ!ふ、う゛♡♡おまえ、にゃんか♡きらいッ♡…ン、あ♡♡♡ああああ!おくっ♡ぐりぐり、んあっ♡すんにゃ!♡♡♡っあ………イ…ッ♡♡♡、らめ♡、…ッやら…ぁ♡♡」

「罵られて勃起する嗜好は、ないんだけど…はあ、お前のは別だよね。全く逆の意味に聞こえる」

「耳鼻科行けえええええ」

「おや、会話が成立する理性が残ってたんだな。いいことだ。もうちょっと付き合うよ。お前がどろどろに溶けるまで、な」

に゛ゃあああああーーーーーーーー………

気がつくと、あいつの肌はツヤツヤで、俺の声はガビガビで、なぜだかずっとナデナデされていた。

罫線枠した

chapter 04

耕太の母ちゃんの一件で、俺はキリコに独占欲が強いなどと評されたわけだが、俺の口からすれば誰がって話だ。

鱗の件のアフターケアであちこち飛びまわって、俺は今回の出来事で出会った連中と時々暇つぶししたり、飯食ったりしてた。耕太とポケモンして、〈四枚〉としばき合いして、穴沢とパチ屋行って、〈六枚〉とコーヒー飲んで。その間、ずっと自分が放置されていたことに、この男は不満だったらしい。しかもそれを自覚せずに、頭がフリーズ起こすまで追い込んでた。

仕事では頭が回るくせに、自分のことになるととんだポンコツになる。無頓着と言うか、やる気なしと言うか。

いろいろと趣味っぽいものは持ってるから、生活に潤いを持たせようとしているのかと問えば、きっとどれも本気じゃない。いろいろと手を出すのは、何かを模倣しているように見えるんだ。俺の予想が確かなら、何かの正体は知らなくていい。

本人はきっと認めないだろうけど、魂の半分を戦場に置いてきてるせいだと思う。俺が不発弾に飛び散った日を忘れられないように。ただ俺と違うのは、こいつはいつも死を見つめている。いつか向かう先を常に見ている。だからそこにたどり着くまでの道のりを、すっぱり頭の中から消してしまっている。実際は山だって谷だって、川や温泉まであるかもしれないのに。きっと今までは、そのでこぼこに無理矢理鉄板でも敷いて歩いてきたんだろうさ。

それが俺と会ってから上手くいかないなんて、責任転嫁にもほどがあるってもんだ。今まで無視してきたものが見えてきたってだけじゃないか。むしろ感謝しろ。

つまりはさ、おまえさんも一丁前に嫉妬したり、落ち込んだりする男ってことだ。

死神の化身なんてあだ名を一枚剝がせば、ただの男。俺もそう。

俺達は信念の間では絶対に譲らないものがあるけど、その他では、そうでもないだろ?

だからさ、〈六

「その名前を出すな。彼には個人的な因縁はないが、無性に不快な気分になる」

「なんでさ。いい奴だぞ。あ、便利な奴か」

「…わかってない」

あいつの唇に噛みついたことは、黙っていた方が誰にとっても良さそう。

6