【BLOG】明日に架ける橋によせて

マンガの終わりに書くには長すぎるので、こちらに「明日に架ける橋」を描いて考えたことなどを書きます。

家族パロを描くに当たって、初めは全く結婚の文字は頭にありませんでした。しかし彼らの関係性を描く中で、家族に訪れる節目を描くのも悪くないのではないかと思うようになりました。ブラック・ジャック自体が昭和の作品であり、その時代のゴールラインが結婚だったということもあります。「どろんこ先生」のように。

結婚といっても事情は家庭によって様々です。どれが正しいなんて言えません。ただクロオとキリコ姉の性格からして、後ろめたい結婚式はしたくないだろうなと頭にぼんやりと浮かびました。そこで私の描く家族パロの面々は結婚についてどう捉えるのかと想像しだすと、真っ先に浮かんだのが黒男の反対でした。

作中には描ききれていませんが、黒男は幼少期からキリコ姉にべったりの生粋のお姉ちゃんっ子です。幼いがゆえに姉を独占する権利を得て、その中で姉を時には母のように慕って成長していきます。姉と母の区別がつかないまま大きくなってしまったのは、黒男の中に実母との記憶があまりないためです。家族パロの設定では黒男は3歳のときに事故にあったことになるので、仕様のないことだと思ってください。

そんな姉が突然他の男に奪われてしまう。しかも相手は嫌ってきた下の兄。黒男の頭は大パニックを起こします。ことの経緯を一切聞かされていなかったのですから。それに関してマンガの展開になるわけです。大好きな姉との関係の変化。大嫌いな兄との対話。このふたつを経て、黒男は少し大人になる、そんなエンディングを目指しました。彼を支えてくれる一人の存在と共に。

そこでタイトルの「明日に架ける橋」になるのです。サイモン&ガーファンクルの代表曲ですよね。歌詞の通りに「架け橋」になってくれたのは誰なのか、それぞれの視点で見ると違ってくるように描きました。上手く描けているかは別ですが…(汗)

【追記】しかしながら、この話を仕上げてから、私は思いつきで結婚を描き出したことを後悔し始めます。血縁関係はなく法律上は問題がないとは言え、世間は彼らをどう見るだろうと、遅まきながら怖気づいたのです。やおいを描きながら、超保守的な自分の主観に苦笑しかないです。そこでこれでもかとクロオとキリコ姉に自分の気持ちを語らせる場面を追加して、彼らの気持ちの強さを描くことで自分の後ろめたさを誤魔化そうとしました。情けない限りです。

フィクションなのだからと割り切れば良いのに、登場人物に引け目を感じる人生を送らせたくないとまで思ってしまうほど、私は彼らにのめりこんでいるようです。世間の目の冷たさに、きっとこれから彼らは何度も晒され、その度に立ち上がるはずです。それは彼らが家族として成立し始めたころと似ているのかもしれないですね。なら、私の心配も少しは紛れるか…

最終章も大詰めです。彼らの紡ぐ物語の終わりを、どうぞ見守ってください。

【17話】ALRIGHT

タイトルはTHE YELLOW MONKEYより。この曲を聞いた瞬間に、これはクロオのテーマだと閃きました。この話を描きたかったのです。原作のオマージュも含めながら作画を組み立てるのは、楽しくもあり、原作へのアンチテーゼにならないように気を遣いました。医療シーンは相変わらずハッタリなので、整合性はありません。少し調べた内容を下敷きにしています。次回からはいよいよ最終章へ。彼らの物語に、もう少しお付き合いください。

【BLOG】Overjoyedによせて

こんなにこんなに苦労させられる話になるとは思っても見ませんでした!!

そもそも最後のデート回くらいにしか考えてなかったのに、いつのまにかクロオは勝手にプロポーズ始めるし、そんなんやったらもっとええおべべ着せたわ!!

そうなんです。この話で悔やんでるけどどうしようもない点に二人の服装があるんです…普段はスウェットかTシャツにジーンズ、汚れたスニーカーがクロオの定番。キリコ姉も似たようなもので、彼よりはうんと手入れの行き届いたシンプルな服装をイメージしてます。普段着ってそんなもんでしょう?

と、こ、ろ、が、デート回ってんで二人に気合の入った服装をしてもらおうと思い立ったものの資料がない!描いていたのが秋だったので、本屋に並ぶ雑誌はみんな冬に向けてのコーデばかり。夏服の資料がない!仕様がないとキンドルで雑誌を漁りまくって、なんとかこれなら…と選んだのがアレなわけなんですよ。ああもう、どうにかして。ごめん。特にキリコ姉、ごめん。

そういうどうしようもないものはさておいて、この話は一度完成させてから、何度も加筆、修正、追加ページを繰り返しています。毎度毎度、これで最後と思いながら、しばらくしてからあの描写入れておかないと不自然じゃないか?整合性とるためには、あのシーン要らないんじゃないか?などなど、次々と思いつくままにやってしまっています。

特に気に食わないと何度も修正したのが、表情でした。クロオもキリコ姉も実に表情豊かに会話をする回だったので、表情ひとつで印象ががらっと変わってしまうのです。クロオのプロポーズシーンは何度も描き直しました。おかげで作画大崩壊です。これを書いているあとからも、やっぱ気に食わんと修正している可能性大です。どうしてかと言うと、ひとえに一番の見せ場であると言うことと、自分の描く線に自信が無いからです。

作画に疲れて、ちょっとサイトのメンテでもしようと過去の作品を見たとき、今より断然良い絵を描いていたのだと思い知らされたのですね。これはもう仕様がない。理由はいくつかあって、ひとつめは下書き無しの一発勝負で描いていたこと、二つ目はペン先をデフォルトのGペンを使っていたこと。

『ROSENKRANZ』まではメディバンペイントを使っていたので、ペン先はGペンでした。まあ何となくでしたが、今にして思えばいいところがたくさんあったなと思います。その後アプリのアップデートでりんごの白いペンとの互換性が著しく落ち、こんなんやってられるかとクリスタに乗り換えたのです。その時に世の中にはこんなにたくさんのペン先があるのかと、迷いに迷い、いっぱいダウンロードされてるやつならよかろうと今のペン先にしたのですね。正直どれがいいのか全然分かりません。当時の私の精神状態では試している余裕もなかったし(ハハハ…)そのまま今に至るんですねえ。何度デフォルトのGペンにしなかったんだと思ったことか。

下書きをするようになったのは、キチンと描いたほうがいいのかなという安心感からだったと思います。今は描かないと怖くて作画できません。これを進化と呼ぶかなんと呼ぶか…

みっつめの理由もあるんですが、これは私自身の精神の鍛錬次第、ということで。

脱線してますね~

この話を描くに当たってゴンドラとか見晴らしのいい景色とか写真に撮るために、私自身も数年ぶりにゴンドラに乗って高原へ行ってきました。いやあ、気持ちが良かった。シニアのご夫婦がベンチで日向ぼっこするのを横目に無心にシャッターを切る私。さぞかし不審だったに違いありません。あれ、ここあの場所じゃね?と気付かれたそこの貴方、お口チャックですよ!まあ…特徴的な地形の土地に住んでいるので、分かる方は分かるでしょう…田舎です。

この話が最終話にまで影響を及ぼすとは、まったく予想だにしていませんでしたよ。完全に独立した話にまで枝を伸ばしてくるなんて!おかげでウンウン唸ってストーリーひねり出す羽目になったわ!楽しかったわ!バカヤロウ!苦しかったわ!誰が考えた話だ!私だ!バカヤロめ!!!

絵が良かったなあと感じるあの頃より、確実に進化している自分がいるはず。それを見つけるために今日もペンを握ります。

【15話】恋の診断書

タイトルはキャロル・ダグラスの「Doctors Orders」より。冒頭電話のコール音から始まる、ただそれだけの採用理由です。タイトルからしていつかブラック・ジャックで使いたいと温めていたネタだったのですが、あっさりと使うことにしました。歌詞は大分甘いので、この状態のクロオにぴったりだなと。この時の電話が、次の話「overjoyed」に繋がっていきます。勇気を振り絞るクロオ。かっこつけたいよな。

【14話】さよならリグレット

様々な感情に揺さぶられた結果、クロオを弟のカテゴリーから外したキリコ。それを望んでいたはずなのに、いざとなると彼女との縁が全て絶たれるような不安に襲われるクロオ。

タイトルはくるりから。さよならリグレット、また新しい後悔にこんにちは。そしてそれにさえもさよならする日を待つのです。

彼らの実年齢からすると相当な晩熟なやりとりをしています。ティーンですらここまでのんびりはしていないでしょうね。一見何もないようなやり取りの中に、越えていくステップが彼らにはあるのです。そしてそのステップが山のようにあるので、丁寧に超えていくことを目指しています。

しかし与えられた時間はあとわずか。男として認識してもらえたクロオ、正念場。がんばれ。

【13話】Raindrops

雄としてキリコに迫るのを隠さなくなったクロオです。ただ彼はロマンチストなのでキリコを特別大事にしたいと、なけなしの自制心をかき集めて彼女に接しています。彼の葛藤を受けて、やっと男として認識しだしたキリコ。彼と彼女の上に降り注ぐ雨粒は何かを洗い流して、何かを育む穀雨となるのでしょうか。

タイトルはBasement Jaxxの2009年リリース「Raindrops」より。ジャケ買いして大当たりだった思い出がある曲です。歌詞にあるように「You feel so good ~」の具合になるまでは、まだ時間がかかるかもしれないけど、やさしくテンポ良く彼らの物語が動き出す、そんなイメージでこの曲を聞きながらペンを走らせました。