隣で眠る銀色の髪を指で梳く。
あんなに乱れた後だと言うのに、するすると元通りにほどけていく。
なんだかつまらない気持ちになって、髪をぐちゃぐちゃにしてやりたくなる。
両手で頭を掴んだ時、背中から腕が伸びてきて、ぎゅうと抱きしめられた。
「人をおもちゃにするんじゃない」
深い息と共に懐へすっぽりと片付けられてしまう。俺はそれも面白くない。
腕をほどいて背中を向ける。
わかってる。こんなの間違ってるって。
キリコが今回こだわってるのはアレサンドロの名誉と尊厳で、アレサンドロ自身に関してどうとかいうのとは違うって事。
だからキリコがあんなにも真剣に怒るのは、あいつのクソみたいな信念のせいで、アレサンドロのせいじゃないって事。
そんなわかりきったことのせいで、俺がもやもやするのは違うんだ。必要のないことなんだ。
少し日焼けした腕が俺の背中に伸びる。
「寒いよ。こっちおいで」
厚手のパイルブランケットからはみ出した俺の脚に傷のない長い脚が交ざる。
背中にあいつの胸板が当たるのをそのままにして、俺はブランケットを思いっきり顔の前に引っ張り上げた。
「顔見せてくれないの」
ぶんぶんと頭だけ振る。
そのままあいつはブランケットごと俺を捕まえて、力任せに抱きしめた。力が込められた腕が痛くて、息をするのが苦しいほどに。
その力がやがて弛緩し、俺の体が自由になる。
あいつの力の強さが残る腕で、ブランケットをそっと広げた。
俺の隣でうずくまるあいつにブランケットをすっぽりとかぶせて、俺もその中にもぐりこんだ。
ブランケットの中身は真っ暗闇。
さわった物しかわからない。ぺたぺたと俺の掌は、あいつの体を見つけ出す。脈がとくとくと動いているのが、俺の胸をあたためる。小さな呼吸の熱に、確かにいのちの息吹を感じる。あいつの体に生きている証を見つけることがこんなにも俺の心を動かすなんて。
冷たい額に唇を当てた。すこうし、そこが温かくなった気がしたから、頬骨のあたりにも口づけした。おもしろくなって、何度か繰り返した時だった。
天地がひっくり返って、ブランケットの暗闇は飛んでいった。
銀の怪獣が俺の唇に食らいついてる。
未だ舞い散る銀の髪は、俺の頬に、肩に、腕にふりつもる。
あいつをひっぺがして、その目を見てやる。
白い面立ちにひとつだけのアイスブルー。纏ろう銀糸は青い炎に焼かれて消えそう。
ああ、そうだ。俺を見てる。
憤怒とか自責とか寂寞とか、もうぐっちゃぐちゃになってるけど、お前は俺を見てる。
じゃあ、それでいいや。
ふ、と笑みの形に俺の唇が崩れたのを合図に、今度こそ銀の怪獣は貪りついた。
今、ウンウン唸りながら書いてる奴の没パートです。固有名詞とか、詳しい事情は後ほど本編を上げたときにわかるはず…最後の詰めがまだ書けない。仕事忙しい。モチベを上げるために投稿。