キリジャバナー2

虹の彼方に(六)

※2021/12/11改訂 いくつかの儀式を経て、俺は装束を身にまとう。 白木の案に載せられたのは俺が指定した衣服。 控えている教団の人間は内心穏やかではないだろうが、知らぬ顔をしている。何せここは奥の院の最深部。一握り...

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虹の彼方に(五)

※2021/12/10改訂 夜が明けるとキリコを連れた大師様御一行は本山へと出立した。出迎えの時とは違い、誰も言葉を発さぬ静寂の中、神輿は社を離れていく。 白い几帳が揺れるのを眺めていると、昨晩のやりとりが脳内に蘇ってき...

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虹の彼方に(四)

※2021/12/5改訂 朝からカガイだ、カガイだと社の中は浮ついている。キリコの言っていた『歌垣』だ。 大師様が山に戻るから、その見送りの宴と、キリコが〈十〉になったことの祝いらしい。 キリコは〈八枚〉様から飛び級で、...

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虹の彼方に(三)

※2021/12/5改訂 朝飯を食うと、キリコはお清めへ。今日もせっせと鱗を育てるわけだ。 相変わらず俺は軟禁。大師様が来てから、俺の監視は一層厳しくなった。大師様の滞在中に不手際があっては一大事ってことなんだろう。俺の...

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虹の彼方に(二)

※2021/12/4改訂 腹に衝撃を喰らって目が覚めた。 重たい頭を上げれば、耕太が布団の上に乗っかっている。 「もう8時だぞ!起きろ!」 やめろ。頭にキンキン響く。 「まだいいじゃねえか。いろいろあって眠いんだよ」 障...

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虹の彼方に(一)

※2021/12/4改訂 さて、この光景をどう呼称しよう。 事故現場…妥当だが些か足りない。 地獄……実に陳腐だ。 立ち登る煙の柱の先に、赤や黄の粉塵にまみれた黒いコートがいる。 ここが終着点なんだな。 全部ぶち壊したお...