キリジャSS詰め(R18)

キリジャバナー2

※喘ぎとかいろいろ注意

罫線枠うえ

【カラー】

ぱくぱく、もぐもぐ、ごっくん。

目の前の男は、テーブルの上の料理をどんどん平らげていく。それは見ていて清々しいほどなのだが、如何せん理由がおもしろくない。

「さすがに20時間オペすると、腹が減ってたまらなくてな。」

男はボロネーゼに手を伸ばす。フォークにぐるぐると毛糸でも巻き付けるようにして、口に運ぶ。

「病院の廊下でひと眠りした後、すごい音で腹の虫が鳴いたんだ。」

ごくごくとレモン水を飲み、つぎつぎに男の胃に収まる白身魚のフリット。

「で、俺のウチに来たと。」

「うん。丁度よかったし、タダ飯食えるからな。」

悪びれもせず、ぱりぱりとロメインレタスを咀嚼する。

決めた。泣かす。

「お前さんの頭、どうかしてるぜ!」

腹が膨れて帰ろうとする男をひっ捕まえて、ベッドまで連れてきた。

「どうかしてるのはお前のほうだ。対価を払わずに行こうとするんだからな。」

「色情魔!色ボケ!好色獣!」

「ふーん。日本語はこういうとき〈色〉って単語を使うんだな。勉強になった。」

「一人で納得して盛ってんじゃねーよ。バカキリコ!」

誤解だな。俺はセックス自体にはあまり執着がない。特別しなくても平気だと思ってる。もちろん性欲が全くないという意味ではなく、他の行為でセックスで得られる欲求を満たせるだけだ。

どうも俺は心の浅い人間らしく、手が触れたり、ハグをしたりするだけで十分な気持ちになる。仕事柄、長いこと人と深く関わろうとしてこなかった結果かもしれない。

だから、彼とこういう関係になるまでには、非常に長い時間を費やしたけれど、そこまで我慢したとは感じていない。BJの情緒が育ってなかった面もあるが、単純に俺が無理にあいつを押し倒す気がなかった。そこまでしなくても、彼との関係は十分に面白かったし、軽いスキンシップやキスをするだけで真っ赤になるBJを見ていると飽きなかった。

それでもまあ、一線を超える日は来るもので、その時は無茶苦茶頑張った。BJに魅力がない訳ではない。裸になって初めて彼の中の脆さに触れた。半ばセラピーみたいだった。生き方が真逆の人間と、ここまで寄り添うことになるとは。結局は燃えたので、俺もまだ枯れてないなとは思った。

今日のは嫌がらせに近いけれど、やるとなればしっかりやる。中途半端は嫌いなんだ。それに現在、理由はともかくとして、俺がその気になる人間は彼しかいないのだから。恐ろしいことに。

まあ、いい。行為の最中にBJをいじるのは面白いし。

「ちくしょう、来るんじゃなかった。」

渋々という体を装いながら、BJはリボンタイに手をかけた。

「食後の運動も悪くないぜ。」

「消化不良起こすわ。馬鹿。」

悪態をついてタンクトップとトランクスだけになったBJに馬乗りになる。悔しまぎれにぼかぼか俺の膝を殴る腕をシーツの上に縫い留めた。キッと俺を睨みつけるも、口元にさっきのボロネーゼソースがついているので、迫力は半減。ぺろりとそこを舐めてやると、BJは面白いくらい目を白黒させた。うん。我ながら上出来のソースだ。そのまま唇をふさぐ。彼は頑なに拒むが、それが本気じゃないことを知っている。

「んっ、ふ…んんっ…」

キスされながら文句言ってるな。ふふんと鼻で笑ってしまった。

「んーーーー!」

暴れるなよ。じたばたするのを抑え込むように、深く唇を合わせた。ぴくっと動きを止めた隙に、舌を入れる。うん。やっぱりボロネーゼの味がするな。BJの口腔を舐め回すように味わっていると、くちゅくちゅと唾液の音が耳に届く。こくりと彼が俺の唾液を飲んだのを合図に、口を開放してやる。

「…っは…はあ…」

足りない酸素を補給するように荒い息をつく。その頬はすっかり色づいている。耳にかじりついてやると、ぴくぴく震える。さあ、ここも赤くなったぞ。次はどこを染めてやろうか。タンクトップをめくり上げる。胸に走る縫合痕が避けているところ。BJの胸の先を舌でかすめた。

「キリコ、そこ、あ…っ」

「最近ここ感じるようになってきたよね。」

「どっかの馬鹿が、舐るからだろ…うっ…」

カリッとかじってやる。背を軽く反らせて、彼は悶える。もっと開発すれば、ここもすごいらしいけど、今はいいや。しなやかな筋肉の収縮を楽しむように、彼の肌に舌を這わせた。そこで「ん?」と気付いた。

「お前、シャワー浴びてきた?」

「あ、ああ。さすがにオペで汗だくだったし。さくっと。」

さくっと、ねえ。彼の尻に手を伸ばし、割れ目のところを指でトントン叩いた。

「ここも、きれいにしてきたんだ。」

かああっと湯気が出そうなくらい真っ赤になって、どっと汗をかくBJ。

「抱かれに来たのか。」

耳元で意地悪く囁く。「違う」「自意識過剰だ」なんて悪態をつくけど「そうです」って言ってるようなもんだぞ。

でも…もし、彼が俺の家に来るたび準備をしてきているとしたら、それを完全にスルーしている俺はとんだ朴念仁ということになる。いや、さすがにそれはBJの言う通り自意識過剰だ。

気を取り直して、もう一度キスをする。さっきとは比べ物にならないほど濃い。キスしながら、彼の下腹部に手を伸ばす。トランクスの下で、もうやんわりと勃ち始めたペニスをそっと握る。ぴくりと震えるのが彼らしい。

「元不感症さん、キスだけで勃つようになったんだね。」

「それを、言うなって…」

くにくにといじめると、たちまち硬度を増す。若いな。ずるりとトランクスをはぎ取ると、ぴょこんと跳ねるように色の浅いペニスが現れる。ちょっとアレやってみるかな。BJの顔に枕を押し付ける。

「抱えてて。見るなよ。」

BJが両手で枕を抱えて顔を隠したのを確認して、俺は口を開けた。ご挨拶なんか省略。根元から裏筋をべろりと舐めた。先端に到達したら、ぱくりと食べてやる。

「あっ、ああっ…キリコ、それっ」

まさか俺がフェラチオする日が来るとは思いもしなかったけど、彼ならいいか。男の股に齧り付いている顔を見られるのは嫌だから、そのまま枕を抱えててくれ。指で竿をしごきながら、できるだけ口腔に圧をかけないようにして、彼の物を口から出し入れする。舌先で鈴口をつつくのも忘れない。

「ふぁ……っ、う、あ」

やらしい声出しちゃって。先走りの味がする。鼻先をBJの黒い茂みに突っ込んで、喉で亀頭を締め付けた。そのまま一気に圧をかけて唇でしごく。

「あーっ!それ、ダメだ!ああっ、」

骨盤を押し上げるようにして、BJはびくんと大きく跳ねる。途端に俺の口に広がる精液。こいつのこんな味するんだ。じゅるると吸い上げながら口から外してやる。イッたばかりで敏感なせいか、彼は小さな悲鳴を上げた。顔を上げると、ばっちり彼と目が合った。見るなって言ったろ。じゃあ、コレも見とけ。

息が上がってとろんとした目つきのBJの顔の前に進み出て、かぱりと口を開け、自分が出した精液が俺の口の中に溜まっているのを見せてやった。彼の眼がそれに釘付けになっている状態で、ごくりと飲み干した。

「ごちそうさん。」

精液の残滓を唇から拭う。BJは、泣き笑いのような複雑な表情をしていた。

「脚、抱えてて。」

ぼおっとした頭では、まともな言葉が出てこないのだろう。呻きながら素直に彼は膝裏を抱える。丸見えになったソコに温めたジェルを塗る。普段見えない縫合痕のところは念入りに。

「ん、む…、」

「何回見ても思うけどさ、お前の体を縫合した人、神がかってるよ。」

「あ、たりまえ、だろ…すごい人なんだ。」

「うん。その人のおかげで―」

ぬるりと人差し指を入れる。

「こんなやらしいことができる。」

中で大きく円を描くように指を回すと、BJはぎゅっと身を縮めた。

「あ、ぐ……そんなふうに言うなっ…俺は…!」

「ダメだよ。力抜かないと、痛くなっちゃうぜ。」

つぷつぷ浅く指を抜き差しすると、少しずつ体の力が抜けていく。そうそう。いい子。くっついたままの膝をグイッと広げると、モノクロの髪を汗でへばりつけて紅潮した彼がいた。色っぽいな。近くで見たい。指はそのままに、彼の顔のそばへ寄る。俺の首に腕を回すので、一応訊く。

「俺の口、お前の味がすると思うんだけど。」

「構やしない。俺の分泌液が俺に戻るだけだろ。…どんな、味か興味があるし…」

「感想、後で教えてくれよ。」

「は、あ……」

ちゅる。BJの肉厚な舌が絡みつく。味わえ。もっと。後ろの指を2本に増やす。枕に押し付けて、キスから逃げることを許さない。俺の指しか届かないBJの前立腺のしこりに触れる。

声を封じられて苦しいのだろう。眦からぽろぽろと雫がこぼれだした。それでもきちんと脚を抱えて耐えている。えらいえらい。ご褒美あげなきゃな。

唇を放して、そのまま下腹部へ移動した。腹の縫合痕の上で横たわるカワイイ彼のものを再び口に含んだ。

「っやぁ…‼ああっ、嫌だ!」

2本の指ではさんで、しこりをごりごり刺激する。BJの体はびくびくと若魚のように跳ねる。それでも脚を開いてる。ホント、健気。もう特別サービスだ。陰嚢をやさしく舐めて、空いている手でカリ下をしごいてやる。3点セットのサービスに、彼は大きく叫んで果てた。

「あ、お前のどんな味だった?」

「…………わすれた。」

くてっとベッドに横たわるBJに小休止を与え、俺は自分の準備を整える。服を脱ぎ、ベッドに腰掛けサックを手にしたとき、彼がのろのろとそばにやってきた。

「まだ、着けるな…」

ベッドから下りて、俺の脚の間にぺたんと座ると、まだ半勃ちのものに手を伸ばした。

「相変わらず、凶悪だな…フツー白人系はデカくてもふにゃふにゃだって聞くのに、お前さんのは硬度もあるからな…おまけに、太い。」

褒めてるのか貶されてるのかわからんことを言いながら、BJはできる限り大きな口を開けて俺のペニスを頬張った。どうしてだか知らんが、彼はコレをしたがる。最初はあまりにドヘタクソだったのが、持ち前の研究熱心さでカバーされつつある。うん。ちょっと上達したな。ガンバレ。

しかしまあ…今日のは視覚的にクるものがあるな。乳首の上までずり上げられたタンクトップに、何もつけていない下半身。脱がし損ねた黒い靴下が、いい味出してる。長いまつ毛にさっき流した涙の粒をつけてご奉仕されちゃ、勃たないわけがない。

「おえ…」

喉の奥にぶつかってえづいたのかもしれないけど、ガチで嫌そうな顔されると、地味に傷つくからやめて欲しい。

よくほぐした入り口に、ジェルを塗した俺のを宛がう。

「久しぶりだからな。きつかったら、言えよ。」

「バーカ。てめえの心配だけしてろ。腰やっちまうんじゃねえぞ。」

ああ、かわいくない。最初の気持ち思い出したわ。ありがとよ。泣かす。遠慮なく突っ込むことにする。くぷっと先端が食い込むとBJの体が強張ったが、そのまま進む。いきんだ体の力が上手く抜けないのだろう。浅い息を繰り返しながら、シーツを掴んでいる。このままじゃ俺も痛いので、入り口付近でゆるゆるやる。

「きつかったら言えっつったろ。」

「ん…ぎ、きつく、ねえ…っ」

「じゃあ、3秒だけ力抜け。」

「は、あ?」

一瞬弛緩した隙に、太い部分まで一気に突っ込んだ。BJは衝撃で呼吸ができないようだけど、あっちのほうは面白いように俺を飲み込んでいく。彼が自分で言うには、一度太い部分を乗り越えれば、後は何とかなるらしい。しかし、いつもながら初めのこの感覚は良いな。

「すごく熱いな…お前の中って。」

炬燵の中みたい。ぎゅうぎゅう締まるから少し違うか。好い具合を味わっていると、気を取り戻したBJが睨んできた。

「…てめえ…殺す気か!凶器持ち!」

ほー、その凶器で悦んでるのは、どこのどなた様でしょうかね。無言で一突き。BJは喉を反らせる。タダ飯ってのが、どんなに高いか教えてやるよ。彼の腰をがっちり抱えて、さあ、スタートだ。

ジェルを足して、ずぶずぶと抜き差しする。よし、だんだん具合が良くなってきた。暖機運転を済ませて、彼の好きな高さまで腰を上げてやる。途端に声があふれ出す。俺の献身的な情操教育の賜物。

「んあっ!あっ、や…ん…っ」

「あー?何?」

「いや、あ…い、や……だッ…ああっ!」

「全然嫌そうに見えないぜ。すごく旨そうに俺の食べてる。」

「うそ、だ!…あ、ん…んん!」

わかったわかった。一回イっとけ。ピンと立ち上がったBJのペニスをしごいてやると、見る間に彼は白濁した液を迸らせた。

本人にはあまり教えたくないが、一度この体勢で達すると、彼はぐずぐずになる。泣き声のように喘ぎ、快楽に溺れる。そんなふうにしたのは誰だと問われると、俺だと言わざるを得ないのだが、俺は普通にセックスしてたつもりだ。普通に。これはこれで男冥利に尽きるけれども、かわいがるばかりになっては今日の趣旨から外れる。俺の復讐心(割とどうでもいい)どうしてくれよう。

後背位で俺の手の中に、彼は何度目かの射精をして果てた。ペーパーで拭く精液はほとんど透明。若いよなあ。ころりと仰向けに転がすと、胸まで真っ赤にして汗みずくになった姿が無防備に晒される。喘ぎすぎたせいか、ひゅうひゅうと喉を鳴らして、焦点の定まらない様子でいる。鎖骨に流れる汗を舐めとると、BJは俺の髪に手を伸ばし指で梳いた。

「お前、俺の髪、結構さわるよな。」

「嫌いじゃない、色だから…べたべたさわられるの、だめだったか?」

「全然。好きにしろよ。」

くふん、と鼻を鳴らして、彼は俺の銀髪の中に顔をうずめた。「においも嫌いじゃない。」と首に腕を回す。…ちょっとかわいいとか思ってしまった。もう少し休ませるつもりだったが、ずぶりと挿入した。

とっくの昔にどろどろになった孔がキュンと締まる。ぐちゃぐちゃ音を立てて掻き出される感覚に、たちまち快楽を得るBJの口からたどたどしい声が漏れる。

「ちょ、と…待て……ッ、なんか、へんだ…ああっ!うあ、あ!~~~ッ‼」

身体をがくがく震わせて、俺に貫かれながら達した。ようだが、彼は射精していない。…あまり知識はないのだが、これは空イキって現象なのだろうか。検証したくなり、そのまま腰を振った。

「だめ、だッ!動くな…ア、いや、あ、」

すぐさま彼の中は達した時のように収縮する。食いちぎられそう。俺の下で涙目になって初めての感覚に戸惑う彼を見ていると、さっきの復讐心がちらりと湧いた。ごりっと奥をねじつける。そのまま抉ると、BJはかぶりを振って跳ね上がるので、両手を捕まえて組んだ。

「やめろ…!これ、おかし…い!いや、だ…いやだッ」

「〈いや〉じゃなくて〈いい〉だろ。〈気持ちいい〉って言えるまで、やめないから。」

舌足らずな声で俺を罵倒しながら、彼は何度も快感の波に呑まれていく。言ってみな。大丈夫だから。今は素直になっていい時間だ。そう耳元で囁いて彼を導く。涙がこぼれるほど固く目を閉じ、BJは俺の背に爪を立ててしがみついた。はくはくと空気を噛む音をさせながら、絞り出すように呻く。

「…い……い…、きもちい……ッ」

「うん。気持ちいいな。」

「ひぅ…いい…ッ、あ、あう…」

「もっと言って。俺もすごく気持ちいいから。」

彼の行動を肯定して、言葉にすることは悪いことではないと覚え込ませる。そうでもしないと、この意地っ張りは頑なに快感を否定する。彼の今までの生き方が邪魔をするのだろう。うん。だんだんとスムーズに言えるようになってきた。今日はここまででいいかな。俺の方が正直もう、もたん。

はあっと息をついて速いピッチでBJを穿つ。大きく喉をひきつらせて、彼の体は応えてくれる。熱い肉がぎちぎちと力任せに俺を食む。これも若さだよな。負けるか。どすっと音が聞こえそうなくらい勢いをつけて腰を打ち付ける。

「…ッぎ、いや、だ!おっき、い…!」

お褒めにあずかり光栄ですが、さっき言ったこと忘れちゃダメだよ。

「〈気持ちいい〉だろ。」

「く、は…ッ、き、きもち、い、から!言った、ぞ!ああっ…もう、いいッ!うあ、またイクっ」

夜の病院で会う時のツンとすました生意気な顔が、俺の手で汗と涙でぐしょぐしょになった顔と同じ人間なんてな。ホント、そそる。おまけに健気。律儀に「気持ちいい」と繰り返して、彼は俺の首筋にかじりつく。

「きもち、い…ッ!キ、リコ…イク、…アッ、すごいの、来るっ!ひっ、うああっ‼あぁーーーー…ッ‼」

回数もわからないほどのBJの絶頂に合わせて、俺も精を放った。

「……ン、っく…」

呻く俺の髪を掻き抱いてBJは震える。うーん。搾り取られる…

これは、クセになるな。手放せなくなったら、どう責任取ってくれるんだろ。

汗まみれになった額を雑にシーツで拭いて、彼の体もきれいにしてやる。どっと体を襲う心地よい倦怠感に任せ、完全に寝落ちしたツギハギの横に寝そべった。身体全体をうっすらと桃色に染めて、あどけない表情で息をついているのを見ていると、俺まで眠たくなってきた。

ビシッとチョップを食らって目が覚めた。隣のツギハギがジト目で睨んでいる。

「…何?」

「シャワー浴びたい。」

「いいよ。使えよ。今までも勝手に使ってただろ。」

むくりと体を起こして、床に落ちた下着を取る。ベッドサイドで履いて、そのまま歩き出そうとすると背中に枕を投げられた。振り向くと憮然としたBJが、ベッドに横たわったまま両手を広げている。

「腰が立たねえんだよ。どっかの馬鹿が凶器を振り回したせいで。」

ぶはっと吹き出してしまった。お前が俺の腰の心配してたくせに!ツギハギはますます機嫌を悪くする。人を3人くらい殺してきたみたいな顔だな。

「責任もって、俺を風呂場まで連れてけ。」

「お前、介護が必要なの?」

「殺した。」

「やめろ。」

さっきまではあんなに素直だったのに。かわいくないったらありゃしない。ハイハイと広げた腕を俺の首の後ろで組ませ、BJの体を持ち上げた。

俺にとっては人生初のお姫様抱っこに当たるのだが、プリンセスとは程遠いヤマアラシがバスルームにたどり着くまでの間ずっと文句を言い続けるので、あまり良い思い出にはならなかった。

罫線枠した

【保険の相談】

*1件目*

「キリコ、俺らの稼業って、いつどうなるかわからんだろ。」

「そうだな。」

「お前さんが遠い所へ行って、そのまま帰ってこないこともあるわけだ。」

「可能性として無くはない。」

「その場合の保険を残してほしい。」

「なんなの、その思想。BJらしくない。ちなみに何を残せばいいわけ?」

「張形。お前のサイズの奴。なんだったら石膏で型を取っていいか。」

「いや、普通に嫌だよ。石膏が固まるまで、ずっとエレクトしてないといけないなんて、どう考えても不可能だろ。なんでそんなもの欲しいの。」

「多分、俺のケツはお前さんに破壊されているから、お前さんがいなくなった時に他のでは代用が利かないかもしれない。もしどうしても仕方がない緊急事態、という場面があったら必要かなと思い至ったんだ。現地点では必要がない可能性の方が大きいから、換金可能なように純金で作ってくれ。」

「それって、ジャパニーズジョーク?」

「冗談でこんなくだらないこと言えるか。ん?俺が言ってることは冗談以下…?」

「我に返るなよ。ここまで来て。で、もし純金で作ったとしても、ダンベルになるんじゃないか。金って結構重いぜ。使うとしても無理だろう。」

「問題ない。床に固定できる形状で作ってもらえればいい。」

「……お前さ、そういうこと、どこで覚えてくるんだ。」

*2件目*

「前に言ってたよな。俺のでBJの尻がどうこうって。」

「言った。不確定事項ではあるが。」

「それ、お前のお得意のセルフオペで何とかならないの。」

「ああー…(しばし思考)」

「括約筋は鍛え直せばいいし、直腸周辺に傷があるなら、まあ多少は無理な姿勢になるとは思うけど…頑張れば、多分…」

「ダメだな。めんどくさい。」

「できないとは言わないんだな。」

*3件目*

「お前さんは、俺の保険欲しくないのか。」

「うーん、いらないよ。」

「そ、そうか………」

「本物がいいし、代わりを探そうとも思ってないからな。」

「………」

「いって!いきなり噛みつく奴があるか!」

「場所を間違えた。」

「せめて頬にしてくれない?」

罫線枠うえ

【Shape of You】

8歳の時、俺の体は爆風に吹き飛んだ。ぼろぼろになった幼い俺を、本間先生が奇跡的な手術で救ってくれた。つらいリハビリを乗り越えて、身体はすっかり完治した。

しかし、成長するにつれて後遺症が現れた。神経系統のものが主だったけれど、知らなくても人生に問題がない部分が後遺症に侵されていると、ごく最近わかった。前立腺である。俺の前立腺は事故の影響でうまく発達しなかったのか、一般的な部位より更に奥まったところにあった。それが性器の感度を鈍くしていたらしく、長らく勃起不全の不感症だと思い込んでいた。あの日までは。

不感症ではないと分かった瞬間のことは、腹立たしくて思い出すのも嫌だ。前立腺を刺激すると、どんな感覚になるのか知ってしまった今は、もっと嫌だ。俺の指ではどうしようもないのだ。くそ。

元凶になった男は、夕暮れの庭にホースで水を撒いている。

気温が上がって来たから、朝と夕に水をやらないと木が枯れると言い、もうかれこれ30分は経つ。手に余るほどの広さの庭を持っているから、いらん手間がかかるのだ。表の庭は入院している患者のために、裏庭はあいつの趣味のために使われている。どっちの用途も腹が立つ。あいつが寝てるうちに、植木屋呼んで間引いてやろうかな。

リビングのテーブルに突っ伏して、鼻を鳴らす。

せっかくきれいにしてきたのにな。

そんな思いが頭をよぎって、ぶるると首を振る。馬鹿な期待をするのはやめろ。こんな事、何度もあったじゃないか。

あいつは俺に触ったり、キスしたりは平然とするが、実はその先には滅多に進まない。

散々俺にちょっかいかけまくって来ていたから、精力絶倫の助兵衛なのかと思いきや、とんだ枯れ具合だったのだ。あんな凶悪なモノ持ってるくせに。だから、あいつから誘われた時は嫌がる振りはしていたけど、本心は満更でもなかった。いや、面白くないんだけどな!

現在の俺はと言うと、正直熱に浮かされている感がある。思春期の性の目覚めも知らず、生涯無縁と切り捨てた肉欲に、今更どう向き合えばいいのだろう。特に難しいオペを成功させた後がひどい。身体に熱が溜まって神経が治まらないのだ。以前そうなっていたときに、偶然あいつと寝たら抜群にスッキリしたので、もうそれ以外は考えられなくなってしまった。ダメなんだ。悔しいことに、俺の指じゃ届かない。

だから熱が冷めない時は、少しだけ期待して、こいつの家に行くのだ。少しだけな。ちょびっとだけな。時間だけが経って、そのまま帰る日もあるけど、たまにできる時もあるから。おかげで腸内洗浄が異常に上手くなった。

ぼんやり見つめる夕焼けの色が濃くなっていく。なんでこんなに長い時間待っているんだろう。体が熱い。エネルギーを持て余してる。こんなガキみたいに……

そうだ。

俺は若いから、あいつより体力があっておかしくない。

だったら、俺から行ってもいいんじゃないか。

どうしてあいつの都合に合わせていたんだろう。気付くのが遅かった!

「やっと水撒き終わった。夕方になっても、まだまだ暑いな。」

リビングに戻ってきたあいつのTシャツは汗でずぶ濡れだ。俺の横を通りながらシャツを脱ぐ。薄い皮下脂肪に腹斜筋が浮かび上がる。汗で湿った僧帽筋に銀の髪が散る。その背中にヤモリのように張りついた。

かぷ。

ウッとかエッとか、間抜けなうめき声が聞こえる。面白くて、もっとかじる。

「おい、人の背中に噛みつくな。いてて。普通に痛いからやめろ。カミカミすんな。」

後ろ手に俺を引きはがそうとするから、逆にあいつの腰に抱きついてやった。

「やめろって、俺すごく汗臭いぞ。シャワー浴びたら相手してやるから。」

全然不快な臭いなんかしない。汗じゃなくて水なのかな。ぺろんと舐めたら塩辛かった。「うひ」と猿みたいな声を出して、キリコは俺の手をタップする。手の力が緩んだところに、ぐるんと俺の方へ向き直る。途端に両手でむぎゅっと頬をつぶされた。

「随分とイタズラするじゃねえか。どんな魂胆だ。言え!」

にやにやするキリコに、そのままむにむに頬を揉まれる。俺、すごい顔になってないか?このやろー。ぴしゃんとあいつの手を打ち落とした。こういうやり取りも悪くないんだけど、今の俺は違うんだ。ぐいっと顔を近づけた。

「やろうぜ。」

「ん、えー…?」

なんだその気の抜けた声。イラっと来たから、あいつの目の前でぽいぽい服を脱ぐ。

「ちょ、ちょっと、待て!」

なんだよ、止めるなよ。腕に残ったタンクトップを放り投げる。

「すごいがっつきだな。どんな心境の変化?さすがに説明なしで、今の状況処理できない。」

「説明も何も。したいから。」

「イヤ、情熱的なのは構わないが、いつもと違いすぎて。」

「ちょっと方針転換しようかと思ってな。俺から行くのもアリだなって。そうだろ?」

顔にかかった髪をかき上げて、そのまま頭を抱えるキリコ。目を閉じてる。瞳が見たいんだけどな。

「…お前、今日手術したな。かなり難しいやつ。」

おお、なんで分かるんだ。

「それで、興奮冷めやらずって具合で、今俺を捕まえてる。つまり、ヤって発散したいと。」

「わかってんなら、しようぜ。問題ないぞ。」

「あるよ。」

盛大にため息をついて、キリコは俺の髪をなでた。

「逆のパターン考えてみろ。俺がでかい仕事成功させて、やったー!って気分でやらせろ!ってお前を襲う。どうよ?」

「殺す。」

「だろ?」

キリコの大きな手が俺の背中をさする。

「そして俺は自分がスッキリしたら、さっさとお前を置いて帰ってしまう。次の日も同じことをして、やがてお前とはセックスするときしか会わなくなる。しばらくしたらそれさえ飽きて、違う奴と楽しむ。想像してみて。」

つきんと痛みを感じた。そんな言い方、ずるい。キリコの眼が見られなくて、あいつの胸板に額をつけた。ふわふわとあいつの手が頭をなでてる。

「だけど、今の俺はそうしたくない。まだちょっとお前と楽しみ足りないからな。」

きゅっと抱きしめてくる、あいつの体温。俺もあいつの背中に手を回す。キリコは、ほっと息をついた。

捕獲成功。

柔道の足払いをかけ、体落としの要領でソファにキリコの体を叩き込んだ。目に星が散っているあいつの上に乗っかって、ベルトのバックルに手をかける。ジーンズを剥ぎ取った段階で奴の叫び声が聞こえた。

「お前!今の話、分かったんじゃないのか⁉どうしてこの流れになるんだよ!」

「分かったよ。理解した。でも次からにする。今日はこのままで。」

荒くなる息をそのままに、早口にまくし立てた。多分、目は血走ってる。キリコの悲鳴と共にボクサーパンツが宙に舞った。

鞄に入れておいたローションを手に取り、あいつの長物に塗りたくる。萎えてるけど構うものか。腐っても天才外科医様の指だぜ。すぐにバッキバキにしてやるよ。ちゅこちゅこ音をたてて扱く。いつ見ても凶悪な形してる。ここが俺の中引っ掻くのかな。つるつるしてるのに、抉られてるみたいに強いショックが来るんだ。ああ、ここ、一番太いところ。これ初めに入れる時、きっついんだよな。でも後はここが好くなってくるんだから不思議だ。

夢中で弄ってたら、奴のは完全形態とはいかないまでも、そこそこ立ち上がった。ようし。跨った俺に、またキリコの邪魔が入る。

「いくらなんでも、そのまま入れるなよ!」

「サック着けたじゃねえか。」

「違う!お前の方だよ。準備できてないだろが。」

「問題ない。」

バーカ。俺がそんなこと抜かるか。黙って竿貸せよ。ローションを塗り込んでぐちゃぐちゃになった孔に凶器の先を当てる。もうそれだけでぞくぞくくる。ゆっくり腰を落とす。息を長く吐いて、力をできるだけ抜いて。

「…ぁあ…ッ」

やっぱりキツイかも。でもここをやり過ごせれば…もう少し。あ、あ、全部入った…

「あ、はは…」

キリコのをぎっちり肚に収めた。これ。これだ。俺が欲しかったの。思わず笑い声が漏れた。ヤバイなあ。このサイズに慣れるなんて絶対道外れてる。頭ではそんなことを思いつつ、腰は自然に揺れていた。

直腸に響く刺激を受けて、右手はペニスを握る。やがてあっけなく俺は果てた。快感の余韻に浸っていると、地の底から這うような声がした。

「気が済んだか。メス犬。」

骨盤を抱えられ、下から思いっきり突き上げられる。内臓がひっくり返ってシェイクする衝撃。息が止まる。ブラックアウトしそうな視界に、銀髪の隙間からキリコの眼が見えた。背筋が凍る。

「……っは、かは…ッ」

がくがくなんて優しいもんじゃない。ガッツンガッツン、コンクリートハンマーでぶち抜かれてる。酸素が足りなくて苦しいのに、体の芯を揺さぶられて、わけがわからなくなる。ぶつっと意識が切れた。

瞬間的な気絶をしたらしい。頬を叩かれて視界が戻ると、キリコが俺を見下ろしていた。

「目覚めのキスはいらねえよな。オーロラ。お前はヤれればなんだっていいアバズレなんだろ。」

ブチ切れた時のキリコは軍属時代のスラングが出る。

「お望み通りに何度でもイかせてやる。9番目の雲が見えるまでな。だが生憎俺はそこが嫌いだ。お前だけ行け。」

ソファの背もたれに押し付けられて、俺は股を開いて喘ぐ。待ち望んだ長い指がふれてほしかった部分を責める。なのに俺は一度も射精できない。あいつの腕に両手を頭の上で固定されてるから。イかせてやるって言ったくせに。

「う、そつき、め!全然、イけない、んんっ」

ごりっと前立腺が捩じられる。

「うあっ、あ、ぐ…」

「ここだけでイってみせろ。メス犬らしくな。」

どうしてそんな回りくどいことするんだ。屹立してカウパーを滴らせる自分のペニスを恨めしく見つめる。ここを擦れば、すぐに達するのに。苦しくて視界が曇る。

「今更べそかいても遅せえんだよ。」

長い指が鉤のように膨れた前立腺を引っ掻く。同時にふうっとペニスに息を吹きかけられた。その刺激だけで、みるみるうちに吐精感が募り、あっけなく俺は果てた。傷だらけの俺の腹の上にびゅっと精液が迸る。散々我慢させられた快感は電流のように神経を焼く。それを味わう間もなく、キリコは更に責める。

「じょーず、じょーず。次はハンデ無しでイけ。」

「もう、嫌だ…!う、っく、こんな、生殺し…んあっ!」

「できるさ。お前は天才だろ?」

「嫌だ!やめろ!あっ、ああっ!いや…だぁッ‼︎」

不応期なんかお構いなしだ。どんなに喚いても知らんぷりで、あいつの指が俺を犯す。こんなつもりじゃなかったのに。

とうとう涙がこぼれだした。悔しくてたまらない。だけど、それ以上に胸が痛い。視線を合わせてもくれないキリコの眼はあまりにも無機質で。

こんなに怒ってるあいつを見るのは初めてかもしれない。

お前が欲しかっただけだ。でも俺が欲しがったのは、あいつの一部だけ。キリコは初めから警鐘を鳴らしていたのに、自分から火に突っ込んでいったようなもんだ。

冷えていく心とは裏腹に、肚の奥に溜まり続けた熱が弾けそうになっていく。じわじわ、ビリビリ。シナプスが焼き切れそう。目の前がマーブルに溶ける。望まない快楽が襲う。もう自分で何を言っているのか、わからない。意味のない母音がただ口から零れていく。

「ひ、やあッ!あっ、あっ、…ッは、ううっ、出る!出ちゃ、、んあああッ‼︎」

浅ましい体はついに直腸だけで極まり、何もない空間に精を吐き出した。

喚きすぎて喉が痛い。涙で息がしづらい。

ぐったりとソファに寄りかかる俺の体を汚す体液を、キリコはきれいに拭いてくれた。そして向かい合わせに俺を膝の上に乗せて、ぎゅっと抱きしめてきた。あいつは一言も言わないのに、静かに体温が染みてくる。温かくて、なのに冷たい汗をかいている。

キリコの心臓の音を感じているうちに、どうしてなのか、また涙が出てくる。絶対に気付かれたくなくて、キリコの首にかじりついて顔を隠した。ぽんぽんと背中をさすられる。赤ん坊じゃねえ。でもこんなツラじゃ説得力なんかない。

尻を持ち上げられ、熱い塊が当たっているのがわかった。こくり、と喉が鳴る。「入れるぞ。」あいつの声に黙って頷いた。

初めとは比べ物にならないくらいの質量が、俺の中を満たしていく。深く息を吸い込んで受け入れるのに集中した。しびれるくらいに気持ちがいい。口から喘ぎ声が漏れる。

みちみちと隘路を広げて大きな熱を受け入れた俺が落ち着く頃、キリコは俺の腕を解いて顔を見合わせた。アイスブルーの一つだけの瞳が苦しそうに歪んでいる。どうしてそんな顔をしているんだ。おまえが苦しい訳ないじゃないか。

でも、俺を見ているんだよな。ちゃんと血の通った目をしてる。だったら尚更。

あ、だめだ。ぼろぼろ涙が止まらない。それを親指で拭って、キリコは俺にキスをした。触れるだけのキス。やわらかくて、あたたかい。

キリコが俺を突き上げ出す。さっきと全然違う。あいつが与える刺激を、ひとつもこぼさず受け止めたくて、俺も合わせて腰を振った。好い所にダイレクトに当たる。涙と汗が散る。くらくらする快感が体中に回っていく。

あいつの眼を逸らせたくなくて、ぼやけた視界の中からアイスブルーを見つけ出す。俺を見てくれている。それだけで。

「キリコ、俺…イきそう…」

「いいぜ。好きなとこで、出していいから。」

さっき中だけで達することを覚えた体は、あいつの眼差しで、ぞくりと震える。荒い息を吐きながら、溺れるようにあいつの膝の上で跳ねた。キリコは俺の腰を支えている。快感が飽和状態になった時、間髪入れずあいつは深く俺を突き刺した。脳天を貫く甘い稲妻。

「あ、イく、キリコ、ああっ!く、あ…あッ!」

ぴゅくぴゅくと吹き出す精液が、あいつと俺の腹に散った。それからソファの上に押し倒されて、何度も何度も俺は達した。キリコは口数が少なかったけど、キスをたくさんしてくれた。最後に深くキスをしたまま果てる俺と同じタイミングで、あいつも射精したのがわかった。

じんわりと広がる充実した感覚に、身体中の何もかもが満たされた気持ちになる。

眦から新しくぬるい涙がこぼれるのを、キリコの唇が受け止めてくれた。

「なあ。」

キリコの胸の上でぼんやりしていたら、静かな声が降ってきた。

「またオペの後で体を持て余したら、俺のところにくるか?」

わからなかった。溜まってしまった熱を、他の方法でどう発散させたらいいか、考えつかない。正直に告げると、キリコの大きい手が俺の頭を抱えた。

「したくなったら、もう少し上手く誘えよ。」

「難しいこと言うな…」

恋愛偏差値ゼロの俺に、ベッドへの誘い方なんかわかるもんか。膨れた俺の頭をなでながら、キリコはかすかに笑う。

「お前のこと、もうちょいよく見てなきゃいけないって思い知った。慢心ってやつかな。」

キリコの声が自嘲染みて聞こえる。

「慢心のついでに言うんだけど」

「ん?」

顔を上げるとキリコの視線と合った。

「お前も、俺のこと見てよ。」

アイスブルーの瞳が苦しそうに歪んだ瞬間を思い出す。

胸が詰まった。俺はきちんとあいつを見てなかった。だから…

キリコは長い息をついて、そんな俺の頭をそっと自分の胸に押し付けた。

あいつの体のぬくみを受けながら、胸板に頬をくっつけて思う。今日みたいなことは絶対ごめんだ。俺にとっても、あいつにとっても。

「こんなこと、もうしない。」やっと言えた俺を、あいつはずっとなでていてくれた。

今日のオペはうまくいった。達成感で満ちている。

あの日以来、馬鹿みたいに浮かされる熱を、うまいこと誤魔化す方法を見つけた。人には言えない方法だけど、自分だけで完結しているのだから問題ないことにしておいてくれ。

だけど今夜はあいつが欲しい。

平常心を装って、ドアを叩くとキリコが出てきた。いつも通りに中へ通してくれる様子に、ホッとする。ひとしきりバカな話して、穏やかな時間が過ぎていく。それだけでほのかに充足感を得るけど、もっと欲しくてあいつのそばに寄った。意を決してキリコのシャツの裾をつかむ。

今の俺には、それが精一杯。顔が真っ赤に火照ってる。

ちゃんと観察したからな。嫌そうじゃないなとか、その気がないわけじゃなさそうだとか。お前だって気付いてるくせに。

笑いながらキリコは俺を抱き寄せた。銀髪がくすぐったい。

「わかった。」そう言う代わりに、あいつは額にキスをした。

罫線枠した

勢いだけで書きました。長らく頭の中にあった設定を吐き出した部分があり、自分の中でスッキリしてます(ニッコリ)。ひとつ乗り越えたら、また次の課題ができる…漫画にしたいネタが湧きまくったテキストになりました。喘ぎとかは、それっぽいSSなどを参考にしたんですが、♡はまだ飛ばせないです。まだ、ね。

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