【シーツに篭城】
体中にキスを受けて、キリコはくすぐったいと笑う。俺の中のイジメッコな部分が沸きあがる。
「じゃあ、ここは?」
不意を付くように、キリコの脚を割り開いて、その間の茂みに鼻を突っ込んだ。
「うわっ!それ嫌だ!」
知ってた。キリコはここを舐められるのを嫌う。
自分が舐めるのはいいくせに、されるのが嫌だって、どういうことなんだろう。
潤んだそこを満たす甘酸っぱい香りは、それだけで俺を昂ぶらせた。わざと大きな音をたてて吸い上げると、キリコの体が震える。「汚い」「変態」と俺を罵倒する声が、だんだん色を帯びていく。汚くない、変態なんかじゃない、とキリコをあえて挑発した。口げんかのように応酬する言葉の中に、快楽の響きが含まれているとお互いに気付いている。
色素の薄い下生えが、べっとりと湿るころ、キリコは大きく肩で息をしながら口元を押さえて、声を殺していた。
ようし、と、キリコの腰を抱えて、俺の目の高さまで持ち上げた。
「え、ああッ!嘘!」
キリコの体を折りたたみ、秘部を天に突き出すような姿勢にして、俺の脚でロックした。
「これなら見えるだろ。」
無遠慮にかぶりつく。じゅるじゅる、ぴちゃぴちゃ、淫靡な水音が響く。もう声を上げることもできないキリコがいやいやと頭を振る。でもその目が俺の舌先に釘付けになっているのがわかる。もう一度きつく吸い上げると、彼女の脚が強張った。あと一押し。
さんざん舐ってぐちゃぐちゃになったそこから、おもむろに口を離すと、指を埋め込みイイトコロを思いっきり刺激した。途端にキリコの腰ががくがくと弾けた。
ぴちゃ。水滴が顔にかかったので、反射的に目を瞑ってしまったけれど・・・
あああ、目を絶対に瞑るんじゃなかった。
「変態!変態!変態!!」
シーツの中に篭城して、声も限りに俺を罵倒する。
さすがに、ちょっと、やりすぎた。
お前さんが感じやすいのは知ってたけど、この姿勢で、その、潮を吹いてくれるとは、思わないだろ?それに、なんだ、自分の潮を自分で浴びるってのも、なかなかない経験だぞ。
この後「かわいかった」と言いたかったのに、「バカ!!!」と絶叫され、キリコをシーツの中から引っ張り出すのに大変苦労した。
【商売女】
某国で大きなオペをした。
なんとも難しい症例だったが、20時間に及ぶオペにより、患者は一命を取り止めた。
謝礼も問題なく受け取り、俺は成功を収めた達成感に満ちていた。
そんな昂ぶった神経を沈める方法は、今までは酒とタバコだった。
でも、その他の方法もあることに、最近ある人物から身を持って教えられた。
だから、ちょっとそういうトコロに行ったのだった。
「イイカゲンニシテヨ!!」
バチンと頬を張られて驚いた。
おいおい、まだこれからだぞ。
「ワタシノカラダ、モタナイ!!モウイヤ!!」
そうか。こういう仕事してるから、付き合ってくれるかと思ったけど、お疲れだったのかな。
交渉した金額に色をつけて渡すと、金髪の女は怒りながら「モウシナイデヨネ。」と受け取った。
おかしい。
ヨハネスブルクでもだめ。ベルリンでもだめ。
ニューヨークもだめ。香港もだめ。
日本人じゃないとダメなのかも。と、ススキノと栄をはしごした段階で、俺はいったい何になろうとしているのかと我に返った。世界をまたにかけて風俗ルポでも書く気なのだろうか。バカか。
もういいやと開き直って、町で安酒をあおっていると「お隣いいかい。」と声がして、見るとキリコが座っていた。いつもの黒いスーツで、仕事をしてきたのは明らかだった。とたんにむかむかしてきて、悪態をつきながら、安くて甘ったるい日本酒を奴の猪口に注いだ。
「お二人さん、看板だよ。」
もうそんな時間か。相変わらずこいつといると時間がたつのが早い。途中で一服盛ってるんじゃないだろうか。ぐうと眠ってしまうような類の薬。
俺はしゃきんと立てたのだけど、キリコはふらついている。危なっかしいなあ。こんな状態のこいつを路上に放置すると、たちまち悪い虫にたかられるのを知っていたから、タクシーを捕まえて奴の自宅まで送ることにした。
ふわふわとした足取りのまま、ベッドまでたどりついたキリコはそのままダイブ。
「おい、せめて着替えろ。スーツよりは楽になるぞ。」
「・・・うん。」
体を重そうに起き上がらせると、ぷつぷつとボタンを外し始めた。こらこらこら。
「ぬがせてえ。」とけらけら笑う。そんなことさせて、知らないぞ。
キリコをすっかり下着姿にすると、たまらなくなって、その豊かな胸に顔をうずめた。彼女の手が俺の後頭部に回り、髪の毛をいじっている。腰に重たい熱がたまるのを感じて、はたと手が止まった。
さんざん遊んできたのに、このままやってしまっていいのだろうか。
愚かな良心の呵責。いまさらだ。しかし、なんとなく気が咎めて、情けない提案をする。
「風呂入ってきていいか・・・?」
風呂場で息子をこれでもかと洗う。もうしわの一本一本まで丁寧に。
スキンつけてたし、痒かったり、膿んだりはないから、大丈夫だと思うんだけど。下生えもいっそ剃ってしまおうかと悩んだ。しかしパイパンになってるなんて、どんなプレイを外でして来たのかと、疑われるのも困るので、石鹸で何度も洗うことに止めた。
そして奴の洗面台に常備されている、消毒用エタノールを塗った。気化熱でひゅっと縮み上がる。
戻ってきたら、キリコはベッドの上でくうくう寝息を立てていたが、俺の気配に気付いたようで、ころりと寝返りをうった。まだ夢の中にいるような、ぽやんとした表情のままほほ笑んで「ん」と、俺に向かって両腕を差し出した。ああ、かわいい。酔ったキリコの中はどんなに熱いだろうと昂ぶってしまい、なけなしの罪悪感を吹き飛ばした。
今日のキリコは機嫌がいいのか、口でしてくれるみたい。いや、今日は、その。なんて言ってる間にタオルを剥がれて、ベッドに仰向けに寝かされた。念入りに洗ったし、大丈夫かななんて天井を見ていたら、息子に激痛が走った。
「大分遊んできたみたいだね。」
にいっと猫みたいな笑みを見せるキリコの爪が、息子の鈴口に食い込んでいる!
「どうして」わかったなんて、間抜けな自白の言葉を飲み込んだときにはもう遅かった。
「めずらしく風呂に入りたがったし、案の定エタノールのにおいまでさせてるし、ばれるって。」
目星つけとかなきゃ分からんことまで見抜かれる。しゅんと叱られた犬みたいになる俺。
「じゃあ、私もお前の好みに合うようにしなくちゃな。」
酔っ払いとは思えない手際のよさで、キリコは枕元にあった本の栞の紐を抜き取り、それで俺の両手の親指を結わえた。目を白黒させるばかりの俺の親指の結び目を、そのままベッド脇についていたフックに引っ掛けた。びっくりするけど、これだけで体の自由がきかない。
「商売女は、自分で慣らすんだよな。」
キリコはまるでストリップでもするかのように、ゆるゆると下着を脱いでいく。それだけで、もう、もう。
そして俺の目の前で、くぱ、といやらしいソコを広げて、彼女の感じやすいところをいじっていく。
くぐもった声を漏らしながら、自分で快感を味わう様はなんて淫蕩なんだろう。
ふるふると体を揺らしてキリコが達してしまうころ、俺の張り詰めた息子からはカウパーがだらしなく流れていた。それを見て、キリコが一層妖しく、艶かしく笑う。
どこからか取り出した、半透明のディルドがその手に握られていた。
悲鳴を上げたくなった。実際上げた。
「待っててね。こっちも慣らすから。」
嫌だ。嫌だ。それ、俺がしたい。
「うまく入らないや。」
ぬらぬらと光るソコにディルドをあてがい、小さな膣口に狙いを定めている。
それ、俺がしたい。俺のでしたい。
うんと狭くてきつい膣に最初に入るときの感覚が、生々しく蘇る。アレ大好きなんだ。最高なんだ。
わんわん泣き叫ぶ俺を無視して、ついにディルドが飲み込まれていく。
ああーーーーーーーーー
その後、スキンを2枚重ねた状態で騎乗位で散々泣かされた。
イキたいです。ごめんなさい。もうしません。イキたいです。許してください。
べそべそ泣き言を繰り返すころには「謝ることじゃあないのにね。」と、ようやく開放してくれた。
完全に飴と鞭に翻弄されている。
よしよしと頭をなでられたら、鼻水をたらしてキリコに縋りつくしかなかった。
「は、あ、ああっ!!」
最後の精を、思いっきりキリコの中に出した。
頭がスパークして、どうにかなってしまいそう。
二人して汗だくの体でそのままどさりとベッドに沈めば、キリコは肩で息をしながら、あっという間に眠りの世界に落ちていった。
俺はもうほとんど透明な液しかたまっていないスキンを外し、口を結わえてベッドの傍のゴミ箱に投げ入れた。あ、入らなかった。仕方ないなとそちらを見やれば、同じようなスキンの残骸が無数に散らばっていた。うげ、何発やってしまったんだと、スキンの箱を見れば空っぽになっていた。
無理させてしまったなあと、遅い後悔をして、キリコの頬をそっとなでた。
布団をかけなおしてやれば、ううんと眠そうな声を出して俺の腕に体をすり寄せてきた。
俺も布団の中で落ち着くと、けだるい中に身も心もすっきりしているのに気がついた。
世界中でただひとつ、俺を満たしてくれる場所の存在を意識して。
「どうしよう・・・・・・・・」
俺は暗闇にぽつりつぶやいた。
【特大なめくじと俺】
あふれて止まらない。
なにって。アレだよ。
昨夜、キリコの中にたっぷり出した、アレ!
夜明けの海が見たくって、寝ぼけるキリコをバスルームに連れて来た。
さすがに体中いろいろな液体で汚れている状態で、つき合わせるのには気が引けたから。
あたたかいシャワーを浴びせると、キリコは気持ちよさそうに目を閉じた。
無茶を強いた自覚はあるので、キリコの体を洗ってやることにした。ボディソープをもこもこと泡立て、さてどこから洗ってやろうかと思案していたとき、どろり、とソレは落ちてきた。
キリコの内腿から、なめくじが這ったような筋が(特大なめくじ)できていた。うわあ・・・こんなに出した?俺?無責任にも程がある。
キリコはというと、器用にも立ったまま眠ろうとしているらしく、全く気付いていない。すまん・・・と心の中で謝りながら、それを洗い落とそうとした。でも、洗えど洗えど、とめどなく出てくる。そういえばベッドにもキリコの尻の下に大きな染みができていた。きっとアレは膣の圧で出てきたものだと思う。そんだけ出たのにコレか・・・!
掻き出したほうがいいのかな。いや、そんなことしてたら、絶対日が昇る。
もこもこの泡で、キリコの背中や胸を洗いながら、未だあふれて止まらないソレをどうしようか迷った俺の目に、バスルームの隅に干されていた水着が止まった。
俺が贈ったやつ。きちんと洗って干してある。
そうだ。水着なら、ある程度水分を含むことを想定して設計されているはず!
「んー、これ、きるの?」
「そう。海に行くからな。だから水着。」
「・・・・・わかったぁ。」
キリコが完全に寝ぼけていてよかった。
バスルームで水着を着けたキリコを見たら、やっぱりかわいくて、このままどうにかしてしまいたくなったけれど、当初の目的を思い出し、雑念を振り払った。
ビーチまでの間、他の男に見せるのが、やっぱり嫌で。タオルにくるんでいこうかとも思ったけど、そうなると完全に犯罪者だ。ナイトガウンでビーチに出るのも妖しい。どうしよう。
「寒いと、いやだから・・・・・・」
むにゃむにゃとキリコが自分のクローゼットから、オーバーサイズの白いパーカーを出して着てくれた。
心底ほっとした。
まさか犬ににおいを嗅ぎつけられるとは、思ってもみなかったけどな。
【家庭教師の宿題】
突然、下品な話題から始まるので恐縮だが、『家庭教師モノのAV』を見た事があるだろうか。
なければ構わない。特に問題は無い。こちらで勝手に話を進めるから。
どんな傾向のものかというと、エッチな体のオネーサン家庭教師が童貞の学生に、いやらしいことがしたければ勉強をがんばりなさいと煽り、その宿題を見事クリアした童貞クンはエッチな体を好きにする・・・という具合のものだ。
何を言いたいのかわからない?まあ、最後まで聞きたまえ。
この『家庭教師モノ』には二つのレールが走っている。エッチなオネーサンにいやらしいことをしたい「レール1」と、そのためには勉強を一生懸命がんばらなくてはいけない宿題がんばるぞ!という「レール2」だ。この「レール1」に向かって「レール2」は常に進行し、必ず「レール1」にたどり着く。その永久的なループを実存させる重要なファクターとして『宿題』が存在する。
頭痛くなってきた?もうちょっと聞いて。
「数学の宿題ができたら、おっぱいさわっていい。」この『宿題』がエッチなこととは別の次元に存在していることが、童貞クンを実際に殺めなくてすむ救いなのだ。これがもし同一次元にあったと仮定してみてごらん?
「今まで触ったこともない部分だったのに、ようやく慣れたと思ったら、潮を吹かれて、もっと上手くなりたいと思ってしまう。」「めったにしてくれないフェラチオをしてくれたかと思ったら、ディープスロートされて、まだこんなに気持ちがいいことがあるのかと新しい扉を開かれる。」「子宮口という未知のゾーンが突然現れて、即時対応を求められる。」
・・・・・こんな無慈悲な宿題が次々と出されるような環境にある童貞クンが、もし存在するのなら、きっと今頃世を儚んでいるかも知れない。しかし、世の中にはそのような宿題にもめげずに、日々研鑽に励んでいる苦学生もいるってことを知ってほしいんだなああ。
え、ラブホのベッドの上で正座して語っても、何のありがたみも無いって?
ちょっと待ちなさいよ。だから、ね。苦学生の努力も買って欲しいって事!!
あん?いや、そんな、苦しめられてるとかじゃないけど。
ちょっと頑張りすぎちゃう苦学生も、だんだん優等生になるかもしれんだろ?
待て待て、どうしてそうなる?
なあ。ごめんって。
機嫌直して。
お願い。
なあ。
【海の境目】
夜の海は怖い。
そう感じたのは、いくつくらいの頃だったろうか。
夜の海原には街灯などないから、空も海も真っ黒で。
それなのに絶えず波だけは寄せるから、まるで真っ黒で大きな生き物が呼吸をしているように感じて、怖かったのかもしれない。
小学生になったとき『海のいきもの図鑑』で、海の中には色とりどりの生命があふれていることがわかった。中学生になって、子孫を残すいのちのリレーが、絶えず海のどこかで行われていることに思いを馳せた。いのちが満ち満ちる場所。俺にとっての海の印象は、そんなところだった。
「日本の詩人でいたじゃない。漁師町は大漁で喜んでいるけど、海の底では幾千の魚の弔いをするだろう、って詠んだ人。」
「いたかもな。」
「だからね、海の中も絶えず死が繰り返されているんだよ。」
「死んでいくまでの間に、よりたくさんのいのちを生んでいくさ。ニシンが数千個の卵を産むように。」
「ニシンの産卵をしているところに、卵を目当てに小魚が群れるだろうね。そして卵は食い尽くされるのさ。」
「腹がくちくなった小魚は、肥えて仲間と旅に出るだろう。何万もの大群になってね。」
「膨れ上がった群れには、大きなカツオが突っ込んで、おいしく平らげるよ。そのカツオもオットセイに殺される。オットセイは南の海で、鯱に嬲られながら死んでいくんだ。」
「オットセイの死骸を寝床にして、小さなカニやエビが育っていくよ。」
「きっとそれはジンベエザメの一口にも満たないだろうね。」
「ジンベエザメが眠る頃、満月の海で、数億個の珊瑚の卵が産まれるさ。」
怖かったはずの夜の海で、隣に座る銀髪の女と、終わることの無い問答を繰り返す。
いのちはめぐり、またくりかえす。
だけど、どの瞬間も決して同じものは訪れないのだ。
ツギハギの俺と、片目のこいつが出会ったように。
二度と訪れはしないだろう、穏やかな口論を、飽きることなく俺たちは続けた。